震宮の一白水星と生体反応に関する気学的考察

   

               

                        五黄土星、暗剣殺のエネルギー的な有意性 

 

 

私は気学の論考を記述する際、五黄殺、暗剣殺という名称をできるだけ用いないようにしている。なぜならこの名称には概ねマイナスの印象をもたせ、五黄土星が持つ本来の働きを覆い隠してしまう懸念があるからである。同様に五黄の反作用として九星に現れる暗剣殺においても、マイナスの働きのみを取り上げる傾向があるように見受けられる。当然五黄土星が運気を乱し、暗剣殺が九星の欠点を旺盛に引き出すことは否めない。ではなぜ五黄土星に天道が付くのか。また暗剣殺に天道が付く九星が現れるのか。その理由を究明していくと、五黄及びその反動として現れる暗剣殺がプラスとマイナスを含めた包括的且つ体系的な働きを持つ事が理解できるようになる。

 

 上記の問題提起に答えるために震宮に同会する一白水星を取り上げたい。一白水星は震宮に同会すると暗剣殺という不安定運気を伴う。但し暦の年盤月盤において天道を伴う場合もある。天道はその九星の利点を引き出し活性化する最も強力なエネルギーである。仮に暗剣殺を全面的にマイナスの働きと考えると天道の働きはどのように評価することになるのか。気の世界はいかなる場合においても意味のないことはしない。吉神が現れる場所とタイミングは常に法則の中で有意性を持ち、意図的な働きを持つ。

 

 震宮の一白水星には他の九星にはない多角的で全体に影響を及ぼし得る重要な働きがある。これは特に生体反応に照らし合わせてみるとその働きの意味が良く理解できる。一白水星のみならず九紫火星もその傾向を持つ。二つの気はそれぞれ暗剣殺が入る時、一白は天道を伴うことがあるが、九紫は天道を伴うことがなく、その他の吉神も伴うことが少ない。これも理由がある。気の世界は震宮の一白に特別な役割を持たせていると私は考えている。その事例を以下紹介し、この働きの意味と五黄、暗剣殺のエネルギー的な有意性を探究してみたいと思う。

 

           

 

         震宮の一白水星に現れる利点と欠点

 

  

五黄土星の最も大きな人体での働きはエネルギー産生と代謝である。さらに解毒作用も土気を持つ五黄土星の働きである。暗剣殺とは五黄土星の対冲に現れる九星の状態を示すが、五黄が代謝を行うのであれば当然その対冲の九星にも代謝の反応が現れる。人体の構成比は水が多くを占め、その水は代謝のために最も大きな役割を果たす。後天図において代謝を活性化させる位置は震宮と兌宮である。その中で特に震宮の一白水星は五行の水気を持ち、代謝の最も重要な機能を果たす。

 

 震宮に同会する一白水星のもう一つの重要な働きは免疫である。震宮は総じて動力を活性化させる。この流れで一白がもたらす免疫力も活性化するはずである。ところが震宮の一白は対冲五黄土星の揺さぶりによって本来の能力を発揮しづらくなる。震宮の一白は天道のように強い活性化エネルギーを伴うと本来の統制力、適応力を旺盛に発揮するが、補強エネルギーがないとその力が分散攪乱し、むしろ弱点が多く引き出されるようになる。

 

 この点を踏まえると、震宮の一白水星のもう一つの見方は免疫力あるいはエネルギーが低下した時、一時的に一白の力を外から借りる形である。外から借りる形とは、人体機能回復のためのエネルギー補給、薬の投与注入、免疫に関する医学的措置である。但しこれは震宮一白の特質から一時的な措置であることが望ましく、これを常態化させると自然治癒力が落ち、エネルギー産生も弱体化する。

 

 一白は自己でないものを取り入れ、これを同化することで自己を増強する性質がある。免疫は自己ではないもの異質なものを識別し攻撃防御するシステムである。この場合、識別を主に担うのは九紫、攻撃を主に担うのは三碧、防御を主に担うのは六白である。一方異物の構造を読み取ってこれを記憶し自己防御に活かす獲得免疫のしくみもある。私はこれを一白が行う同化作用の一環と考えている。この同化作用は自己にないものを外から取り入れ、これを自己の特質に加え補強する仕組みである。一白の敵を味方につける能力はここからもたらされる。以上の観点を踏まえると、気学で捉える免疫とは陰陽の法則通り、排除と同化という対極の方向性を併せ持つ仕組みとなる。免疫における二つの方向性は包括的には自己を守るという使命を対極の立場から担っているものと考えられる。

 

 その中で震宮の一白は外界に接し、異質なものを取り入れ同化する窓口となる。但し一白にも異物を同化できるものとできないものがあり、しばしば内部干渉や拮抗を起こす。一白は自他共振による同化の気であり、本来自他の区別をつけない。このことは相剋を起こす気質のみならず同系統の働きを持つものが合流することで互いの働きを干渉し、本来の役目を発揮しなくなるという弱点も浮上させる。震宮の一白は本来敵であるものを味方のごとく反応し、兌宮の九紫火星は本来味方であるものを敵のごとく反応する。二つの気が過剰反応すると炎症を引き起こす。免疫における敵と味方の区別は、厳密性と寛容性の間でしばしばバランスを崩す。これは免疫に携わる九星の気が五黄土星の影響によりバランスを崩し、本来の気質を逆転させることがあるからである。両極に振れる五黄の気は免疫においてもプラスマイナス双方の影響を及ぼす。 

 

 一白水星は八卦の坎に当たり、坎はパルスの形を表す。パルスはシグナル伝達を受け持ち、そのシグナルを一斉に行き渡らせる働きがある。一白のシグナルは正確かつ規則正しく伝えられることが望ましい。この形を示すのが坎宮及び離宮の一白水星である。坎宮の一白は統括の立場から全体に指令を出し、その反応をフィードバックしその状況を踏まえたうえで計画的指令を出す。離宮の一白は中宮六白金星の恒久性のある動きを正確に制御するパルスとなる。一方震宮に同会することで振動を強く促された一白は、その集団化する気質を煽られると、シグナルの過剰反応によりストーム現象を引き起こすことがある。

 

 震宮の一白に天道が伴うと、一白は明確な目的を持ち、統制力を発揮し、決められた道筋を通りゴールへ突き進む。さらに離宮の一白に天道が伴うと、一白の水は気体となって上昇し、天より降り注ぐ慈雨となる。天道を伴う一白は枯渇するものを満たしながら命を繋ぐ。一白の水気は流転することで本来の役目を果たす。震宮の一白は総じて一時的、臨時的、限定的用い方に尽き、常態化に適さない気である。水気は常に動き、適量によってその利点が生かされるものである。

         

 

 

        震宮の一白水星による生体への主な働き

 

 

その他、震宮に同会する一白水星の生体への主な働きとして推察されるものを今後の研究課題として掲げておきたい。このことにより五黄土星及び暗剣殺を伴う九星がどういう役割を担うか客観的に見えてくる。気の世界はプラスとマイナスの表裏一体の世界である。プラスだけの状態もマイナスだけの状態もない。プラスの裏にはマイナスがあり、表に出ている面のみを唯一の現象と見てはならない。尚、一白に天道が伴う場合はプラスの効果が現れると見、天道等の補強エネルギーがない場合は概ねマイナスの効果が現れると見る。

         

 

① 遺伝子発現 能力開花

 

  総じて潜在能力を引き出す効果がある。坎宮に記憶が凝縮され、潜在能力が

    温存されると見る。その坎宮の気を体現する一白が能力発現を促す震宮に同

  会することで潜在能力が開花する。

 

 

② 細胞分裂  転移  浸潤

 

    一白を細胞とし一白の活性化を細胞分裂の活性化と見る。震宮の一白は対冲

  の五黄土星に促され代謝を活性化させる。また震宮は全体に行き渡らせる力

    を持つため、震宮の一白は転移、浸潤の力が強くなる。一白は流動の気であ

    り一つの場所に留まらない。またシグナル伝達を受け持つため、震宮に同会

    することでその伝播が不規則化したまま拡大する。

 

 

③ 免疫力  抗体反応

 

    一白は免疫の中心的役割を担う。一白は異物を同化する働きを持つ。これに

    対し九紫火星は異物を識別し排除する役割を担う。免疫は九紫と一白のバラ

    ンスによって外界の異物に対抗し適応する。

 

 

④ 免疫抑制 ステロイド

 

    震宮の一白を免疫力増強と減退の形とする。五黄土星の両極に動く気質によ

    り、一白の免疫作用が両極に動く。一白は同類の作用を持つものを内に入れ

    ると、しばしば相互干渉、拮抗を引き起こす。また一白の気は過剰に摂取す

    ると依存症に陥りやすく、欠乏状態による反動を起こしやすい。ステロイド

    は抗炎症、免疫抑制作用があるが、同質の働きを持つものを外から加えるこ

    とで上記の反応が副作用として現れると考える。ステロイドの副作用は一白

    不安定化(過剰及び欠乏)からもたらされる症状と見る。震宮の一白は常態

    化ず、欠乏する所へ限定的、臨時的に補給することが理想である。

 

 

⑤ ストレス解消  意欲向上  抗うつ  抗不安  多幸気分

 

    気学では一白をストレスの形とする。ストレスは縮小、抑圧からもたらされ

    る。この一白が解放の震宮に出ることでストレス解消がもたらされる。これ

    に伴いうつ傾向が改善され意欲が向上する。この場合も天道を伴う一白と、

    これを伴わない一白の違いが出る。震宮の一白は環境によってプラスにもマ

    イナスにも傾く。

 

 

⑥ 代謝  解糖  肝機能による代謝  腎機能調整

 

    肝臓は震宮に属し、震宮は体力増強と代謝活性化を担う。震宮に同会する

    白は肝機能を向上させるが、一白の不安定化により震宮の肝機能を不安定化

    させる。コレステロールは肝臓で代謝される。コレステロールは一白の気質

  に該当するため、震宮の一白にはコレステロール代謝の働きがあると考えら

    れる。震宮の一白における代謝は兌宮における食事の量と質によって変動し

    、震宮における運動量によっても変動するまた腎臓は坎宮に属し、坎宮を

    定位とする一白が代謝を司る震宮に同会することで腎機能を活性化させる。

  同時に一白の気の過不足により、腎機能不安定化する。

 

 

⑦ 薬の投与及び注入  緊急栄養補給  輸血 

  

    薬全般の働きを一白の作用とみる。また糖を一白とし、血液を一白とする。

    震宮の一白は外から投入する形と見なす。一白は自生する気であるが、外部

    の異物を取り入れ同化する力も持つ。人体は自己治癒力を持つが、その力が

    弱くなり制約される時は外から同じ作用を持つものを補強として取り入れる

    こともできる。震宮は一時的、限定的、緊急性の宮であり、投与の仕方はこ

    の限りにおいて正しく機能すると見る。

 

 

⑧ インスリンの働き全般  血糖値調整  遺伝子発現  記憶制御  細胞増殖

 

    インスリンの働きは総合的には一白の働きと見る。従って一白の欠乏症状あ

    るいは不安定化はインスリンの働きの低下と見る。一白は統括、統合、指令

    、伝達、フィードバック、制御、計画、記憶、増殖を司る。一白の欠乏状態

    は無を味する二黒土星の欠乏状態と表裏一体の関係となる。

 

 

⑨ 発汗作用  利尿作用  体温調整  PH調整  イオン濃度調整

 

    震宮を出入りが頻繁に行われる場所とする。体の内外に出入りする水を震宮

    の一白と見る。水の量及び水の成分の調整により代謝を図る。

 

 

⑩ 解毒作用及び毒性の合成  外部からの毒性攻撃(虫・動物)

 

    毒を一白とする。解毒は肝臓で行われるが、震宮の一白を解毒あるいは毒に

    刺さる形と見る。三碧木星を攻撃性のある生物とし、この場合の一白を毒に

    よる攻撃とする。

 

 

⑪ 免疫過剰反応  アナフィラキシー

 

    一白を総合的な免疫反応と見た場合、驚き、過剰反応を引き起こす震宮にお

    いて、一白の免疫作用も条件次第で過剰反応を引き起こす。

 

 

⑫ 殺菌 抗生物質

 

    細菌を一白とする。震宮は人体が外界に接する最先端の場所であり、最も感

    染しやすい場所、環境と見る。震宮は拡散する力を持つが、同時に外界に姿

    をさらされており、攻撃されやすい環境にもある。震宮の一白は中宮三碧の

    攻撃力、殺菌力にさらされると同時に、三碧の攻撃力が低下することにより

    繁殖力が増す。震宮の一白を殺菌作用と見なすと抗生物質の働きもこれに該

  当し、その様々な副作用も震宮における一白水星の生体反応と見ることがで

  きる。また抗菌薬を多用すると耐性菌が増える。震宮の一白は同じ一白の気

  質を持つもの同士が混淆し拮抗することがある。このため均衡が崩れると、

  既存の有効な働きが失われることがある。

  

 

⑬ カルシウムウェーブ

 

    カルシウムは一白に属する。坎(一白)はパルスの形でもあり、シグナル伝

    達、情報伝達全般を担う。震宮の一白は外界に接する最先端であるため、外

    界の予期せぬ影響も受ける。このことがしばしば一白による情報の混乱を招

    く。一白は全体の統括の役目を負うため、一白の欠乏、不安定化は指示命令

    系統の混乱を招く。カルシウムの過不足が生体の様々な場所に影響を及ぼす

    ことは、震宮に同会する一白の働きを見ることで理解できる。

 

 

⑭ 血圧の変動  心拍数上昇  不整脈  血液凝固  止血

 

    一白を血液とし、震宮の驚きと急な運動により血圧が変動する。震宮は急激

    な運動等により、状態が不規則化しやすい。一白(坎)の気は縮小、凝固の

    作用をつが、震宮同会においてはその縮小、凝固の逆転現象も起きる

 

 

⑮ 筋肉痙攣  しびれ  疼痛緩和  麻酔

 

    三碧木星を筋力とし、その制御を一白が司る。一白と三碧は他の九星にはな

    い強い結びつきがあり、一白と三碧はプラスマイナス一心同体の動き方をす

    る。一白の気の不規則化により三碧の筋肉が硬直あるいは律動的に収縮する

    。麻酔の効果を震宮一白の働きとし、シナプスの神経伝達をブロックする。

    この場合震宮の一白が三碧の活動電位の発生と伝播を抑止する。

 

 

⑯ 催眠  せん妄  幻覚  幻聴  妄想

 

    眠りの状態を一白とする。一白には現実にないものを創造、空想する働きが

    ある。その機能が過剰になることで上記の反応が起きると考える。震宮の一

    白は自己催眠、自己暗示を促す。

 

 

⑰ アルコール依存  離脱症状 

  

    アルコールを一白とする。一白には強い吸引力があり、常態化すると依存症

    が現れる。一白は欠乏すると渇望症状が現れる。

 

 

⑱ 自制心の低下

 

    坎の形は圧縮の形と見る。従って動力の制御ではブレーキの役割を果たす。

    震宮は動力推進の位置であり、一白は中宮の三碧木星を調整するブレーキ役

    となる。但し対冲の五黄土星のエネルギー次第で制御が不安定化することが

    ある。一白の制御が緩むと自制心が低下し、警戒心が失せ、総じて先の見通

    しが甘くなる。一方、天道を伴う震宮の一白は逆に自制心を保持し、一つの

    目的に邁進する力を強くする効果がある。

 

 

⑲ 難聴

 

    一白は耳の機能を司り、震宮における音振動を記号化あるいは言語化し意味

    付けする。震宮に同会した一白が不安定化すると聴き漏れ、聞き逃しの傾向

    が出る。

 

 

⑳ 健忘症状  記憶障害  物を落とす  紛失 

  

    東の一白(暗剣殺)を用いた場合によく出る症状である。記憶の働きの中心

    には一白の働きがある。一白には統合、繋ぎ、集積、圧縮の作用がある。震

    宮の一白は定着しない水気となるため、しばしば健忘が現れる。震宮に同会

    すると直線的且つ横の移動に意識が向くため、下への意識が薄れ、物を落と

    し紛失する傾向が現れる。

 

 

㉑ 視空間認知の低下

 

    震宮の一白は視野が狭くなる。一白は縮小、凝縮、凝固の気である。空間の

    広がりを見せる震宮に一白が入ると、速度の上昇に伴い視空間の縮小が起き

    、視空間認知が低下すると考える。

 

 

㉒ 帯状疱疹  免疫力低下

 

    一白は元来坎宮に属し表には出ないが、表である震宮に同会すると、水面下

    に潜伏していた能力を顕在化させる。一白は六白との連動が強いため、ウイ

    ルスを抑制する六白の力が弱ると潜伏していたウイルスの力が浮上すると推

    察する。ウイルスの持つ帰属性を巽(四緑木星)の気とし、四緑木星と対冲

    関係にある六白は四緑の力を制御する。六白の気には強い防御力があり、四

    緑の気から派生するウイルスを制御する。六白が及ぼす免疫力は非常に強大

    であり、ストレスによる免疫力低下は主として六白のエネルギー不足から生

    じるものである。

 

 

㉓ 炎症反応

 

    炎症反応には震宮の一白水星と兌宮の九紫火星の二つの反応がある。震宮の

    一白は水気に準ずるもので、縮小凝固反応が出るもの、滲出、浸潤、浮腫、

    線維化の症状がでるもの、疼痛、切り傷、凍傷、細菌感染による反応などが

    考えられる。兌宮の九紫は火気に準ずるもので、発熱、熱感、膨張を伴う症

    状、ウイルス、細菌感染による発熱、化学薬品の刺激によるもの、火傷など

    が該当する。

 

 

 

 

 

 

浅沼気学岡山鑑定所監修