持たない豊かさ

 

坤は持たない豊かさを表す。豊かさのことを福と置き換えてもよい。福は凡そ兌(七赤)の気が豊かであることからもたらされる。兌の気とは生活に必要なもの、衣食住が事足りている状態を言う。この兌の気がある程度固まってくると、次は乾の気に移行する。乾は兌で得た収穫を保管し蓄積する気である。そしてその蓄積したものを不足するところへ施す。これが乾、六白の役割である。

 

坤の役割は育てること。無から有への変化をもたらすことである。坤は土であり、土はものを生み出す元となる。母胎は坤の気からもたらされ、土と同じ働きをする。土に種を植えると芽が出て実が育つ。母胎から子が生まれ、庇護を得て、芽が出て実となり成長していく。坤はあらゆるものを育てているが、自らは報酬を求めない。ところが命あるものはいずれ土に戻ってくるから、報酬を求めなくともすべてはいずれ坤に戻ってくる。そしてここから再生する。土の中には無数の微生物が生存する。これが有機物を分解し肥沃な土を作る。この循環を陰陽五行という。五行の中の土の役割はものを変化させること。陰性のものを陽性に変え、陽性のものを陰性に変える働きである。

 

坤は尽くすのみで見返りを求めない。物質的見返りも精神的見返りも求めない。だからこそすべては坤に戻る。そういう気が宇宙にはある。豊かさは持つことと私たちは考えているが、持たない坤の気から兌の物質的豊かさは生まれている。一切の見返りを求めない坤にしか生命を宿し、生命を育てることができない。この摂理を私たちはどのように受け止めるだろうか。

 

 

 

 (浅沼気学岡山鑑定所監修)