箕子之明夷 利貞【地火明夷六五】
箕子は殷の政治家。殷の紂王の無道を諫めて聞き入れられず、狂人を装い身を隠したと言われる人物である。いつの世にも誠を貫くことができず、正しいことを主張しても聞き入れられず、不遇の中で悶々と過ごす人がいる。敢えて狂人を装うということはそれ相当の見識の持ち主でなければできないことであろう。真の賢人は生きている時に評価されないことが多く、またそれをあえて避けようとする人もいる。一方生きているうちに実力を発揮し、成果を上げ、富を得、厚遇される人もいる。
地火明夷とは離の明智の光が地下に埋もれた形。否塞の世の形である。世の中の人が当たり前だと思っていることの中に、どれだけの間違いや勘違いがあるだろうか。正しいことが世の中に当たり前に認知され実行されるようになれば、どれだけの人が救われ、住み心地の良い社会が築けるだろうか。そのことを知っていても今は明智を隠し敢えて狂人を装う。龍はいつの世にも在野に隠れ潜んでいる。「利貞」。出入りを厳密にし身を慎むという姿勢がすべてを物語る。
(浅沼気学岡山鑑定所監修)