易は中を貴ぶ
易の爻辞を見ていくと明らかに中すなわち第二爻、第五爻を重視していることが分かる。易経では乾の九二を次のように説明する。「見龍在田 利見大人 何謂也 子曰 龍德而正中者也」。ここにある正中が中位に対する易の評価である。中位に立つものはその立場を弁える限り吉を保つことができる。但しその立場を逸脱すれば地位があっても凶に転落する。中は陰陽のバランスを取る核となる。坎の真ん中の陽爻は上下の陰爻を引き寄せ束ねることにより陰陽のバランスを取る。離は真ん中の陰が上下の陽爻と適度な距離を保ちながら陰陽のバランスを取る。陰陽逆転した坎と離は後天図の縦軸に配置され、回転軸となることによって拘束力と反発力を生み出す。
欠点はエネルギーバランスが崩れているところ、偏っているところに生じる。エネルギーバランスとは陰陽のバランスであり、力の均衡である。易の世界、気の世界は対冲のバランスで成り立っている。従っていずれか一方が強すぎても弱すぎても均衡が崩れ、それが全体のバランスを崩す元になる。中とはどちらにも偏らない状態である。力の均衡が崩れる時とは自分の力を誇示する時である。それゆえ正中である龍徳のことを隠者と評価する。本当に実力のある人は自らの力を知るがゆえに自らを誇示しない。
浅沼気学岡山鑑定所監修