天澤履と国境

「履」の語義は天澤履において読み取ることができる。天澤履の爻辞からは国境を越えて異族の土地に踏み入ることの畏れが読み取れる。天澤履は履礼。境界線を越えて他人の領域に踏み入ることの畏れから、礼節の卦とする。古の人はなぜここまで異族の土地に入ることを畏れたのか。「履」という文字に国境なき交易、国境なき出入りの凶意を読み取ることができる。

 

「履」は土地を賜ってその土地を踏む践土の儀礼を意味する。「復」は往来反復。古代には魂を招き入れるために北に向かい、「復れ」と叫ぶ儀式を行ったという。践土の儀礼はまず異国の土地が祖霊に守られていないという観念からもたらされる。古代の政はまずもって祖霊を祀ることから始まり、これをもって禍から身を守ることができた。国境は紛争の地でもあるが、呪霊の存在、そして疫病に罹ることの危険性を意識していたとも考えられる。

 

 

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天澤履が異族、異国に入ることの畏れを表したものとすれば、賓卦の風天小畜はその対処方法を示したものと読み取れる。

 

風天小畜

初九「復自道 何其咎 吉」

筋道を立てて復(かえ)る。何の咎めがあろうか。このことは神意に適う。

 

九二「牽復 吉」

牛に綱をつけて帰る。

 

六四「有孚 血去惕出 无咎」

真心がある。血族を去るにあたり畏れながら出発する。咎めなし。

 

吉と結びつく爻辞には共通して「復れ」との叫びがある。

 

易の爻辞には国境を定め、国境の危険性、異族の土地に入ることの危険性を記したものが多い。特に第三爻からはこの危険性と畏れを感じ取ることができる。易の爻辞は宇宙の法則を物語る。ここに記述されていることは常に現実の状況に置き換えることができる。天澤履から受け取るべき教訓とは何か。

 

国境がないということは限りなく守られにくいことを意味する。古来より防疫は国家の最重要課題の一つでもあった。私たちは国家に対して何を望むのか。国とは何か。国境とは何か。

 

天澤履の上九に「視履考祥 其旋元吉」とある。

践土に際し神意を察する。進退に関して三考し吉凶の判断をせよ。それ旋回すれば大いに神意に適う。

 

 

 

 

(浅沼気学岡山鑑定所監修)