硫黄 Sulfur S

 硫黄は五黄土星または九紫火星の気質に当たる。五黄土星はエネルギーの生成と調整を行い、解毒作用をもたらす。九紫は五黄の陰陽両極に振れる気質を改め、均整と秩序へ導く。

元素の特徴を九星に置き換えるうえで一つの重要な基準となるものが色である。九星は色が明確に定まっているため、元素単体の色は九星の特定に役立つ。但し色が銀白色のように九星に当てはめにくいものもある。その中で中央の色である黄色を明確に出し、五黄土星の最大の特徴であるエネルギー生成と解毒作用を持つ必須元素は硫黄だけである。硫黄は元素として特別な存在であり、五黄が持つ破壊と成就の両極性を持つ元素として注目する必要がある。人体においても重要なホルモンには硫黄を含むものが多い。

硫黄は生体においてエネルギー源となり、代謝や解毒の働きがある。この硫黄の化学的性質を見ると、五黄土星のみならず九紫火星の気質を含むことが分かる。このことは五黄が九紫の強い影響下にあり、九紫の気質を間接的に発揮していることを示している。

 

 

〔硫黄の色〕

 硫黄は固体で黄色を示し、溶解すると赤褐色の液体となり、燃やすと青色の炎を放つ。また二硫黄は気体で紫色を示す。黄色は五黄土星、紫色は九紫火星の色となる。液体は固体より波動が高く、気体は液体より波動が高いと考えられる。九紫が定位とする離宮は波動が最も高い位置にあるから、気体の二硫黄が紫色を現わすことは理に適う。これらのことは五黄土星が物質の状態あるいは波動状態によって他の九星との結びつきを変え得ることを示している。

 

 

〔解毒作用〕

 硫黄が持つ解毒作用は気学的には五黄土星が持つ解毒作用に由来するものと考える。五黄土星は陰と陽の気を併せ持つエネルギー体で、陰陽の混淆による解体と陰陽の結合による成就という正反対の結果を生み出す。硫黄を含むグルタチオン(C10H17N3O6S)は薬物や異物の解毒を行い、抗酸化、抗炎症作用に特徴がある。

 

 

〔絶縁性〕

 硫黄は電気を通さない。硫黄の電気抵抗率はゴムやポリエステルよりも高い。この性質は硫黄が五黄土星の気質を持つ元素であることを裏付けする。五行の土は電気を通さない。

*電気伝導性と九星との関わりについては「炭素」の解説において記述。

 

 

〔同素体の結晶構造〕

 同素体とは同じ元素ではあるが原子の結合の仕方によって異なる性質になるものである。硫黄は全元素中もっとも多くの同素体を作る。その多さも五黄土星の特徴の一つと言ってよい。五黄とは他の九星を束ねる役割があり、それによってゼロから新しいものを作り上げる。硫黄の同素体であり黄色結晶を作る斜方硫黄は王冠型S環状分子を持つ。五黄は九星の中では王様的存在であり、その気質が分子の形としても現れている。

 

 

〔硫黄を含むホルモン〕

 硫黄(S)を含む主要なホルモンには以下のようなものがある。代謝は活性化(上昇エネルギー・陽)と抑制(下降エネルギー・陰)の両極の方向性があり、この転換を行うのが五黄土星である。但し五黄は成就と破綻のように極端に動き、その働きを外から調整することが難しい。一方九紫火星は不要な関係を断ち、偏りを適正化するため、働き方が正確かつ明瞭である。

 

インスリン   C257H383N65O77S6  

        働き:糖代謝。脂肪合成と分解抑制。

        グリコーゲンの合成と分解抑制。

オキシトシン  C43H66N12O12S2   

        働き:生殖。摂食抑制。骨・筋肉の形成。糖・脂肪の代謝。

カルシトニン  C145H240N44O48S2  

        働き:カルシウム代謝。

 

 また硫黄を含む補酵素にはビタミンB1(チアミン)・ビタミンB7(ビオチン)がある。ビタミンB1はブドウ糖・分岐アミノ酸の代謝に用いられ、欠乏すると神経炎や脳組織の障害を起こす。ビタミンB1欠乏症には脚気、ウェルニッケ-コルサコフ症候群がある。ウェルニッケ脳症における運動障害、コルサコフ症候群における精神錯乱、作話症、記憶障害は、総じて震宮の一白水星(暗剣殺)が引き起こす障害の特徴に当たる。ウェルニッケ脳症の原因の中にアルコール依存症が掲げられているが、これは震宮の一白水星暗剣殺がもたらす障害の典型例と考える。

 ビタミンB7(ビオチン)は脂肪酸の合成、アミノ酸の代謝、糖新生に関わり、不足すると、食欲不振、うつ症状、皮膚症状、筋緊張低下、筋肉痛、知覚異常、痙攣、発達遅延などの神経症状、免疫機能低下、結膜炎などの症状が現れる。ビタミンB7に見られる目、知覚異常、発達遅延などの症状は九紫火星の代謝不全および欠乏症状と見ることができ、これ以外の症状は震宮における一白水星暗剣殺の障害と見ることができる。

 五黄土星は過剰と欠乏の両極に振れる傾向があるため、代謝の異常がしばしば現れる。気学では代謝が最も活発な宮を震宮と考える。三碧木星が中宮に同会する時、五黄土星は食を意味する兌宮に同会し、一白水星は暗剣殺を伴い震宮に同会する。震宮の一白はエネルギーの過不足が生じると生体に障害をもたらすこともあるが、天道により障害を抑え代謝を活性化させる働きがある。また七赤金星が中宮に同会すると五黄土星は震宮に同会し、九紫火星が暗剣殺を伴い兌宮に同会する。この時九紫は天道のような活性化エネルギーを伴うことがないため、九紫の欠点が旺盛に引き出される。従って硫黄を含むホルモンおよびビタミンの過不足が生じると、一白および九紫の特徴に沿った障害が現れやすくなると考えられる。

 

 

〔自然界の硫黄化合物と人工的に生成された硫黄化合物〕

 自然界に存在する硫黄を含む化合物は生体において重要な働きを担う。硫黄化合物は自然界に存在するものに限らず、化学薬品や医薬品としても数多く存在する。人工的に生成された硫黄化合物については、気学から指摘しておくべき点がある。

 ホルモンやビタミンは代謝に不可欠の働きをもたらすものとして定着している。一方人工的に生成した硫黄化合物は生体への適応に必要とされる悠久の年月を経ていないため、それが長い年月において有益に出るか有害に出るか不透明な部分がある。こうした硫黄化合物は長期的には何らかの形で暗剣殺の障害が現れてくる可能性がある。暗剣殺は五黄土星の対冲に生じ、特定の九星の欠点が状況に応じて現れてくるエネルギー体である。そのマイナス作用は年月を経て徐々に顕現するという特徴がある。中でも兌宮の九紫火星は人工的な生成物の摂取による生体への障害を現わしており、アレルギーなどの自己免疫疾患や炎症反応は九紫火星暗剣殺の典型的な症例として見ることができる。

陰陽五行とはすべての気質の整合性を必然的に取るしくみである。自然界に存在する化合物はその整合性を得た状態であり、化合物を構成する元素同士の整合性のみならず、他の化合物との整合性も得ている。こうした自然界のバランスは人工的に作ることができない。陰陽五行が示す所は常に上昇エネルギーと下降エネルギーのバランスである。何かを抑えるための機能を付加すると、必ず同時にその反作用エネルギーが生じ、これが副作用となって跳ね返ってくる。

 五黄土星は成就と破綻の両極性を持ち、九紫火星はバランスが取れないものを切り離し、均整化を図る。五黄は解毒作用を持ち、それ自体がエネルギー源でもある。硫黄は五黄の気質を旺盛に持つと同時に九紫の気質も兼ね備える。解毒と陰陽均整化の働きを持つ硫黄は今後も薬品等での開発に用いられる重要な元素となるであろう。その一方で人工物は常に生体における代謝のバランスを不安定化させる要素を持つことも念頭に入れておく必要がある。

 

 

〔硫黄を含む食品〕

 硫黄は魚介類、肉類、卵類、豆類、藻類、野菜に含まれる。特に甘海苔に多く、タコ、イカ、ほたて貝、玉ねぎ、ニンニク、ブロッコリー、小松菜にも多く含まれる。また主食である白米にも微量ではあるが含まれる。

 

 

 

 

浅沼気学岡山鑑定所監修