相剋の科学

 木火土金水は相生の流れ。相剋は隣り合わないエネルギーが互いに剋する関係と見る。この現象は物理で考えるとよい。相生とはエネルギーのベクトルが一致している関係。相剋はエネルギーのベクトルが逆転している関係である。

 

 

 木は上昇のエネルギー   ↑

 火は上昇の極まり。最高点。↑

 土は上昇と下降を逆転させ、あるいは静止状態を作る。

 金は下降のエネルギー   ↓

 水は下降の極まり。最低点。↓

 

 

【金剋木】

 金は木を剋する。木の上昇エネルギーと逆転する関係は金。金は金属となり木を伐り加工する道具となる。剋する関係は傷つけるというマイナスの評価ではなく、使いやすくするために形を変え、相手の要望に応えるために身を削る関係と捉える。相手のためにわが身を犠牲にする関係は過剰になればマイナスであるが、適度であれば相補関係となる。六白金星にとって四緑木星の関係を例にとると、自分の身の回りの環境を整えてくれる四緑木星は貴重な相補関係であるが、主従関係を結び六白が四緑に無理な要求をすると四緑は反発し相剋の関係となる。

 

【火剋金】

 火は金を剋する。火は上昇エネルギーの最高点であり、ここから土を介して金の下降へ転ずる。火は火力が増すと金属を溶かすことがあるが、金属は燃焼に強く実用的な道具となる。これは相剋を上手く利用した形であり吉となる。七赤金星と九紫火星の関係も火剋金を表す。七赤金星が中宮に入ると九紫火星は暗剣殺を伴い相剋の関係となる。九紫は規範、礼節を司るが、七赤はこれを緩める。一方九紫が中宮に入ると七赤は吉神を伴い良好な相補関係となる。この場合の七赤の役割は分かりやすさ、話術、機転、コミュニケーション力であり、九紫の教える能力を補完する関係となる。

 

【水剋火】

 水は火を剋する。火は最高点の上昇エネルギー。水は最低点の下降エネルギー。水と火は最も強い相剋の関係となる。火は右回転のエネルギー。水は左回転のエネルギー。磁力では離宮(火)がN極。坎宮(水)がS極。元素マグネシウムは五行の火であり、マグネシウムは水と激しく化学反応する。水は燃焼を止めるが、火力が増すと水は蒸発する。水は気体となり上昇エネルギーに転ずることができるが、火が下降することはない。一白水星は離宮に同会すると天道のような吉神を伴いプラスのエネルギーになる。本来火と水は強い相剋関係であるが、気化した水は離宮に適応する。高気圧の六白金星が中宮に入ると、熱気により気化した一白の水が雲となり雨となる。これを慈雨とし、自然界における金生水の関係と見る。一方九紫火星が坎宮に同会すると、火の上昇が水の下降に転ずることがないため、相剋が明確に現れる。

 

【土の働き】

 土は陰陽転換を行う働きを持ち、上昇と下降を逆転させる。また上昇でも下降でもない静止状態を作る。後天図の八宮においては艮宮、中宮、坤宮が土性、十二支においては丑辰未戌が土性となる。艮宮は引継ぎ、接続を行う場所である。艮宮には下降・後退のエネルギーである丑と上昇・進行のエネルギーである寅の二つの区域がある。この丑寅の境界を鬼門という。鬼門とは逆転するエネルギーが隣接し、最も断絶しやすい気の境界線のことである。

 

 最下点の水は木の上昇へ直接繋がれば、そのまま成長していけるはずであるが、艮宮は水と木の間に土を仲介させる。水と木はベクトルが逆転するが、水は木とともに上昇することができ水生木となる。土は水と木の逆転したベクトルを繋ぐ。これは木の成長に対する地球特有の計らいと考える。木は水だけではエネルギー不足であり、土を得ることで根を張り、養分を得てより強く成長していくことができる。根は土の下に延びていくものであるから下降のエネルギーであり、幹と枝葉は光に向かって上昇していくから上昇エネルギーである。木の基本は上昇であるが、土は枝葉の上昇と根の下降双方のベクトルを繋ぐ。

 

 水と木は相生の関係であるが、土を介して土剋水、木剋土と相剋の繋ぎを作る。火と金は相剋の関係であるが、土を介して火生土、土生金と相生の繋ぎを作る。相生の関係には相剋の要素を加え、相剋の関係には相生の要素を加える。こうして気の世界は対立と相補性を織り交ぜながら陰陽の対称性を築く。

 

【土剋水】

 土は水を剋する。土は水の動きを妨げる。土は陰陽逆転の働きであり、上昇と下降を逆転させ、時に静止状態を作る。従って常時動く水は移動に干渉する土とは相剋の関係となる。水は下降エネルギー。水は土に沁み込み、土は水の下降を妨げる。大量の水は静止した土砂を動かし山を切り崩す。適量の水は土に沁み込み木を成長させるが、大量の雨は土を削り土砂崩れを起こす。これは水剋土である。また水は多すぎると木は根腐れする。これは水剋木である。水は適量を吉とし、多すぎても少なすぎても凶である。水は適量以外では災いとなり苦しみとなる。水は愛情となり適量以外は束縛と孤独を招く。

 

【木剋土】

 木は土を剋する。木は上昇エネルギー。土は陰陽転換を行う働きを持ち、上昇と下降を繋ぎあるいは逆転させる。土は木(植物)に栄養を与え育てる。木(植物)は土から栄養を得て育つ。土はすべての犠牲となり、この犠牲により木は成長する。一方が一方の犠牲となる関係は相剋の関係であるが、内実は土から木が生じているので相生の関係を含む。

 

 木剋土を九星の関係から捉えると、土の八白土星と木の三碧木星は易の形からも分かるように、逆方向へ進む形となる。三碧木星を表す震は進む形で、八白土星を表す艮は停止あるいは後退の形である。二つの九星は気質が逆であり相剋関係となる。次に八白土星と木の四緑木星の関係を見ると、震と艮のように逆転関係とはならず相剋が緩やかになる。八白と四緑は時に良好な相補関係を築くことがあるため、木剋土が明確に現れるのは三碧と八白の関係と捉えることができる。

 

 このように地球の現象では木剋土と土生木が共存する。土は忍耐、犠牲、困窮の気質を持ちながら、水と微生物の働きによって生命を育成する。木は土の養分を得て成長し、冬になって枯葉を落とし、枯葉は腐葉土と化す。この循環は木生土であり、地上の現象は決して木剋土に留まらない。

 

 

                 

 

 

【相剋の吉】

 相生をプラスとし、相剋をマイナスの関係と見る見方は、自然現象から捉えると決して真実ではないことが分かる。エネルギー関係は確かに相生相剋で物理現象を作るが、五行は土という陰陽逆転と繋ぎをもたらすエネルギーが入ることで、地球独特の生態系と気の循環を作っている。気学には相剋の吉という表現がある。これは相剋によって却って吉作用を得ることをいう。

 

 例えば家は総じて相剋の関係を利用することで建てることができる。家を相生の関係で組み立てると耐久性が得られずすぐに倒れる。斜交いは相剋を利用した組み方であり、相剋という互いを犠牲にし、対立する力関係を使うことで強度が得られる。相剋は逆転するエネルギー作用を使うことで強度が増すという特徴がある。人においても同じことが言える。子供は愛情という相生のエネルギーのみでは育たない。しつけという相剋のエネルギーが必要である。何でも相生のものを与えていたら子供は強くならない。忍耐力、持続力は相剋のエネルギーによって得られる。好きな食べ物は相生。嫌いな食べ物は相剋。口当たりの良いものだけを食べていては、人は健康を害す。苦手な食べ物であっても栄養価の高いものは適宜食する必要がある。

 

 このように相剋の吉は生活の中の至る所に現れる。相剋のエネルギーは使い方によって人を強靭にし、運気を強くする。相剋の九星はむしろ弱点を補うために必要不可欠な存在となる。相生は確かに背中を押してくれるエネルギーであるが、若い時はむしろできるだけ吉運の相剋を取り入れ、気力体力をつけていくという考え方もある。このことは決して気の法則に違うものではない。本命月命の九星には相生のみならず相剋の九星にも天道が付く。天道は相剋の九星を相補関係に転じ、その九星の才能を発揮させる。気の世界の意図には奥深いものがある。

 

 

 

浅沼気学岡山鑑定所監修