ナトリウム Sodium Na
ナトリウムには水分を保持する働きがある。この気質は六白金星の特徴をよく現わす。ナトリウムは銀白色の金属で柔らかく水に浮く。柔らかく水に浮く気質は五行木である。金属のナトリウムは水と激しく反応して発火する。水は一白水星の物質であり、一白と相生で反応性が高い九星は三碧木星と六白金星である。また一白と相剋で強い対立関係となる九紫火星は発火をもたらすエネルギー体である。
六白金星は密度の濃い状態を意味し、一白水星の直下に置かれる(沈む)気学的な性質がある。この一面を捉えるとナトリウムは六白の特徴から外れているように見受けられる。ここでもう一つ考えられるのが七赤金星の性質である。七赤の気質を旺盛に持つ元素は炭素であるが、七赤は加工しやすい金属あるいは劣化した金属でもあり、また石油から精製されたプラスティックも七赤の気質に入る。このため物質の形態によって水に浮くものが出てくる。この経緯からナトリウムは五行金の気質を持ち、六白を基本資質としながらも七赤の気質に近い金属と定めることができる。七赤は火・炎症を意味する九紫に過剰反応する傾向がある。
またナトリウムはカリウムと拮抗する性質を持つ。この拮抗は対立と相補性を現わす。カリウムの気質を三碧木星とすると、三碧と相剋の関係として拮抗するのは六白金星および七赤金星である。また三碧は一白水星と相生ではあるが互いに制御しあうから、この関係を拮抗と捉えることもできる。
塩(塩化ナトリウム)は六白金星の気質を持つ。この場合、塩素とナトリウム何れかに六白の気質が含まれるものと推測できる。塩素で既に記述した通り、塩素は刺激臭と毒性があるため、一白水星および三碧木星の組み合わせを持つ元素と規定した。塩は過剰摂取で高血圧をもたらすが、高血圧をもたらすものは塩化物イオンではなくナトリウムイオンとの見解がある。気学においては高血圧を呼び込む九星は高圧を意味する六白および血管の収縮をもたらす一白の働きである。この経緯からもナトリウムは六白を主な気質とする元素と見定めることができる。
〔冷却作用〕
ナトリウムは冷却剤としても使用される。この性質は一白水星が持つ気質との関連により説明できる。一白水星は六白金星を抑制する働きを持ち、一白の力が強くなると六白の熱エネルギーは放出に向かう。この場合の一白は水であり六白は熱を帯びた金属または熱エネルギーと考える。また震宮の一白水星は代謝によって起こる発汗作用を示しており、これも一白の冷却作用として捉えることができる。過度な減塩は体温低下と免疫力低下を招くことはこの理からも説明することができる。
〔ナトリウム不足の症状〕
ナトリウムが欠乏して低ナトリウム血症になると、錯乱・反応の鈍化などの脳の症状、また頭痛、嘔吐、食欲減退、痙攣などが起きる。低ナトリウム血症は水分の過剰摂取、下痢、嘔吐、腎不全、心不全、肝硬変、利尿薬の使用など多岐にわたる要因で起きる。
低ナトリウム血症は気学の観点から、一白水星と六白金星と過不足とその関係性から捉えることができる。一白および六白の過不足はそれぞれ震宮および坎宮において現れやすい。震宮の一白は過剰な水分補給あるいは発汗・嘔吐による水分の欠乏を起こしやすく、これが原因で血中ナトリウム濃度の変動を来す。さらに震宮の一白は暗剣殺によってエネルギーが不安定化するため肝機能および腎機能の低下を招きやすい。これら臓器の機能不全もナトリウム濃度の調整に異常を来す要因となる。また一白が過剰になると六白が暗剣殺となりエネルギー欠乏状態となる。六白の欠乏状態はナトリウム欠乏状態に繋がる。
低ナトリウム血症は一白の過剰および六白の欠乏からもたらされる場合と、一白と六白に関与する臓器の不調からもたらされる場合の二つの側面から捉えておく必要がある。気学の観点から捉えると、一白と六白、一白と三碧は相互に連携して動いているため、一白の過不足は三碧および六白の不調となり、また逆に三碧と六白の何れかに過不足が生じても、いずれ一白の不調となって跳ね返ってくる。
〔体液浸透圧の調整〕
ナトリウムとカリウムは拮抗的に作用する。この場合のナトリウムは六白金星、カリウムは三碧木星に当たる。六白と三碧は一白水星と相生であるが、六白と三碧は相剋の関係となる。この性質を利用して細胞の内外の浸透圧が調整される。ナトリウムは細胞外液に多く含まれ、カリウムは細胞内液に多く含まれ、細胞の浸透圧の維持を行う。浸透圧の調整は震宮における一白水星と三碧木星との関係性および一白水星と六白金星との関係性から捉えることができる。
〔血圧上昇〕
ナトリウムは血圧を上昇させ、カリウムは血圧を下降させる。六白金星と一白水星は互いを強く引き寄せる性質(*注)があり、六白の気質を持つナトリウムが増加すると血液のナトリウム濃度を一定に保つために一白の水分が増え血圧が上昇する。
同様の事例としてステロイドはナトリウムを増やしカリウムを減らす。ステロイドは一白水星の気質を持ち、一白は六白を引き寄せるため、ステロイドが分泌されると血液中のナトリウムは増える。また一白の力が増すと三碧の働きは抑制されるため、ステロイドが分泌されると血液中のカリウム(三碧)は減る。一白と三碧および一白と六白の関係は気学における暗剣殺が生じるため、互いの力関係のバランスを取りにくい。血圧の上昇と下降はこれら九星のエネルギーバランスを取る過程で出てくる現象と考えられる。
*注)一白水星は六白金星を強く引き寄せるが、限度を超えると六白の放出に転ずる。一白をストレス(圧縮)の形とし、坎宮の六白金星暗剣殺をストレスによる心機能の低下、腎機能の低下、免疫力低下、体温低下と考える。
〔カルシウムとナトリウムの関係〕
カルシウムとナトリウムは一白水星と六白金星の関係性をよく現わす。塩分を取りすぎるとナトリウムの排出とともにカルシウムが体外に排出され、骨格中のカルシウムを低下させる。また土壌においてナトリウムイオンが過剰になると植物細胞壁や土壌の粘土鉱物からカルシウムイオンを追い出し、植物の生育を阻害するという報告がある。
カルシウム摂取を増やすとナトリウム利尿が促され血圧は低下すると言われる。その一方でカルシウムは血管の筋肉を収縮させることから血圧を上げる作用がある。カルシウム拮抗薬はこの作用を抑えるために用いられる。このカルシウムの働きは一見錯綜しているように見えるが、これは震宮における一白水星暗剣殺の基本的な働きとして理解することができる。暗剣殺は五黄土星の対冲に生じるエネルギーであり、五黄は上昇と下降が混淆するエネルギーであるから、環境条件によって九星本来の気質を逆転させる。震宮の一白水星には体内及び体外の環境条件の変動による血圧調整の働きがあると考えられる。
ナトリウムとカルシウムの関係を見ると、六白金星のナトリウム過剰による弊害が強く現れるように見受けられるが、気学ではこの逆で一白水星過剰の方が双方の関係をより不安定化させる。六白は硬直な気質により一白過剰によるストレスを逃れられないが、一白は六白の影響を形態変化と柔軟な動きで対応できる。一白と六白の関係は一白が過剰である時に崩れやすく、力が均衡しているかあるいは六白の力がやや優勢に立つ時のほうが互いの力を発揮しやすい。ナトリウムとカルシウムの拮抗は、ナトリウムが六白のみならず一白の気質を持つことも影響している可能性がある。
補足として震宮の一白水星を発汗作用と考えると、発汗により一白の水分が放出されると六白金星の塩分(ナトリウム)も同時に放出される。震宮の一白は暗剣殺の影響によって働きが不安定化するため、艮宮で隣接する六白は必然的に一白不安定化の影響を受ける。一白と六白は結合と解離によって力の均衡を測りながら運命共同体のような動き方をする。
〔ナトリウム電池〕
ナトリウムは電池としての利用も注目され、現在電気自動車への開発が加速している。ナトリウムは六白金星の気質を持ち、元来エネルギー源としてのポテンシャルを持っている。六白は無尽蔵のエネルギー体であり、資源としての枯渇がないという特徴がある。但し六白は実用化・利便性を意味する兌宮に同会すると弱点が出てくる。一方同じ普及性を意味する震宮では六白は規則的に天道という活性化エネルギーを伴い安定化する。兌宮は石油などの加工や精製を必要とするエネルギー体が基本スタイルとなり、震宮は即利用可能で揮発性を持つものが基本スタイルとなる。
〔ナトリウムを含む食品〕
ナトリウムを含む食品としては食塩(塩化ナトリウム)が最も大きい。その他味噌、しょうゆ、つくだ煮、即席めん、うどん、ハム、パンに多く含まれる。
浅沼気学岡山鑑定所監修

