先んずれば迷い後るれば主を得る

「坤  元亨 利牝馬之貞 君子有攸往 先迷 後得主 利西南得朋 東北喪朋 安貞吉」

 

坤は大いに通る。雌馬の如く身を慎しめばよろしい。君子は往くところありて、先んずれば迷い、後るれば主を得る。西南に朋を得るのがよろしい。東北に朋を喪う。安寧にして身を慎めば吉である。

 

 

「先」は除道のために人を派遣すること。先行する義。「後」は元来敵の後退を祈る呪儀。”先んずれば迷い後るれば主を得る”の「後」は人の後からついていくという意味のほかに、後退の義も念頭に置いておく。「朋」は貝を綴った形で貝貨を意味する。この形から朋友の義が生まれた。

 

坤の気質は”成すことなくして終わり有り”である。こちらから成そうとしなくとも事は自然に落ち着くべきところに落ち着く。この言葉は何もしなくともよいと解釈するのではなく、あえて人の後からついて行き「主」すなわち導き手の力を借りなさいということ。そして変化の兆しが現れ、こう動けばよいと分かるまで待ちなさいと教えている。

 

坤は方位の西南。西南に行くと概ね母親との縁が戻ってくる。あるいは年配の女性が親身になって面倒を見てくれるようになる。それは西南に庇護、受容、母性、介抱、解放の象意があるからである。朋を得るによろしとは庇護者を得ることを言う。

 

一方東北は方針転換、環境変化の方位である。東北は変化の波に乗る方位であるから人事の移動が連続的に起きる。さらに東北は艮の方位である。この「艮」は「後退」の「退」に通じる。「艮」は邪眼によって後ずさりする形で、神域の出入を禁ずる義である。気学的に見ても東北という方位は変化が連続的に起こり舵取りに苦労する。これらの諸事情が”朋を喪う”理由となる。

 

但し吉方の東北は気学的には人との繋がりが増え、総じて仕事の幅が広がる。旧態依然とした状況を克服し、別の方面に可能性を見出したいときに向かう方位でもある。北東は運気の判断が難しく、その人固有の相性やタイミングで吉凶が分かれる。東北は西南の反対の方位である。東北がもたらす方向転換は坤爲地の状況と真逆の展開となる。「安貞吉」とは安寧を祈り、出入りを厳密にし身を慎みなさいということ。そうであれば神意に適うと言っている。

 

 

 

(浅沼気学岡山鑑定所監修)