マグネシウム Magnesium Mg

 マグネシウムは九紫火星の気質に当たる。九紫火星は物事の秩序化均整化を図り、物と物の間隔を適切にする。また物事を解決し、束縛から解放し、ストレスを解消する。従ってマグネシウムは身体の統制と恒常性維持に極めて重要な地位を占める元素の一つとして掲げることができる。

 マグネシウムの生体における働きは酵素の活性化、軟骨と骨の成長、神経伝達、体温や血圧の調整、遺伝情報の発現、筋肉収縮、うつ解消など多岐にわたる。九紫火星の気質を持つ元素の代表はマグネシウムであり、マグネシウムは資源として枯渇することがないほど豊富に存在する。マグネシウムが生体にとっていかに重要であるかはその働きの多様性によって証明できる。

 マグネシウムを九紫火星と規定する決め手は一白水星を代表するカルシウムとの関係性である。気学では一白水星と九紫火星は水と火の関係で最も強い相剋の関係となる。一方で対立の裏には必ず相補性が現れるのが気の動き方であり陰陽の法則でもある。マグネシウムとカルシウムは生体において拮抗し血圧を調整する。それ故カルシウムが一白の気質と決まればマグネシウムは必然的に九紫の気質を持つ元素と決まる。二つの元素は相剋の気質を持ちながらも、その裏では相補関係を築く。

 マグネシウムの働きと九紫火星の働きに整合性が現れる生体反応は数多くある。尚、マグネシウムの色は固体で銀白色となり、九紫の紫色ではない。一方マグネシウムを含む肥料である苦土の苦味は九紫の象意である。 

 

 

〔振動に強い〕

 マグネシウムは振動吸収性が最も高い。これは九紫火星の元になる八卦離の構造を見るとよく分かる。離は物と物の適正な間隔を作り、振動や摩擦を減衰させる。振動は震宮において最も強くなるが、九紫は震宮と非常に相性が良く安定性を保つ。また九紫火星が中宮にある時、震宮の七赤金星は持ち前の柔軟性と変容力を活かし、中宮の九紫の働きに貢献する。

 

 

〔電磁波遮断〕

の形は物と物を分離・遮断・絶縁の形である。九紫火星は他の九星との配置によって電気や電磁波を遮断する性質を現わす。九紫火星が中宮に同会すると離宮に四緑木星が暗剣殺を伴い同会し、震宮に七赤金星、兌宮に二黒土星が同会する。四緑は電磁波の波を意味するが、離宮に同会することにより自由を失い完全な制御下に置かれる。さらに四緑は縁を繋ぐ気であるが、離宮に同会するとその分離作用によって離縁あるいは適正な間合いが生じる。七赤は電気を通しにくい性質があり、また二黒土星は五行の土性によって電気や他の刺激に対して無反応となる。一方マグネシウムは九紫の気質を持つが電気伝導性が比較的高い。このことから九紫は他の九星との関係性において離合を調整するものと考えられる。

マグネシウムは九紫火星の気質を純度高く持つ元素であり、九紫火星は離宮を定位とする。九紫火星が離宮にある時はエネルギー生成の五黄土星が中宮に入り、すべての九星が定位に配置される。この時、震宮と兌宮に三碧木星と七赤金星が配置され、電気伝導性の基本形が現れる。

 

 

〔腐食〕

 マグネシウムは腐食しやすいという欠点を持つ。腐食は兌宮との相性を見る。九紫火星は兌宮に同会するとエネルギーが不安定化し本来の能力を発揮しづらくなる。兌宮の九紫火星暗剣殺は兌宮特有の劣化、腐食の形と見る。

 

 

〔血圧調整〕

 マグネシウムは血圧の調整に関わる。マグネシウムとカルシウムは拮抗する性質を持つ。カルシウムは一白水星の特徴である圧縮・凝固作用を担い、マグネシウムは九紫火星の拡張作用を担う。マグネシウムはカルシウムによる血管筋肉の収縮を抑え、血圧上昇を抑制する。

 

 

〔血栓予防〕

 上記同様、マグネシウムはカルシウムの収縮・凝縮作用を抑制するため、血管を拡張させ、血小板の凝集を抑え、血栓を作りにくくする。

 

 

〔糖尿病の抑止〕

 マグネシウムはインスリンの働きを促進し、メタボリックシンドロームやⅡ型糖尿病の発症を抑制する。九紫火星は一白水星の気質を持つ糖質・脂質の代謝に働き、一白の過剰を抑制する。また九紫火星は震宮の七赤金星とタイアップし、酵素の働きを担う七赤をバックアップし代謝を活性化させる。

 

 

 

〔筋肉弛緩〕

 マグネシウムには筋肉を弛緩させる働きがあるため、マグネシウム不足は筋肉痛や腰痛を引き起こす要因となる。筋肉の動きが最も活動的である震宮と九紫火星は相補性が高い。また九紫火星が中宮にある時、震宮には弛緩をもたらす七赤金星が同会する。一方関節や骨の繋ぎを現わす艮宮と九紫火星は相補性が低く、一定の規則に従い破という亀裂を伴う。本命月命における九紫火星の状態を見ると、これらの症状の先天的気質を確認することができる。

 

 

〔皮膚に対する効果〕

 マグネシウムは皮膚バリア機能の回復に役立ち、乾燥肌、皮膚炎の改善に効果があると言われる。皮膚の状態に影響を及ぼす九星としては、二黒土星、四緑木星、七赤金星、九紫火星が掲げられる。二黒、四緑、七赤は九紫と密接な関係を持つ。その中でも九紫は二黒との相性が非常に良く、常に安定的な状態を保つ。九紫は二黒と七赤の協力を得て皮膚のバリア機能を果たす。九紫が中宮にある時、震宮の七赤および兌宮の二黒は安定的な状態を保つ。七赤は肌のうるおいと保湿を担い、二黒は外部からの異物侵入を防ぎ、外界からの強い刺激やストレスの緩和を行う。震宮の七赤と兌宮の二黒は皮膚の水分調整も行う。一方九紫は兌宮に入ると暗剣殺という障害が生じ、本来の能力を発揮できなくなる。兌宮の九紫火星暗剣殺はマグネシウム不足による炎症反応と見ることもできる。九紫は美容に最も貢献する気である。

 

 

〔うつ・自閉症・多動性の解消及び予防〕

 九紫火星の気質を持つマグネシウムには、うつ、自閉症、注意欠陥・多動性障害(ADHD)の改善や予防効果がある。九紫には秩序化、順序化、均整化、目的の明確化、解決、解放、覚醒、自立の働きがある。うつや自閉症が生じる気学的な原因には二つの道筋が考えられる。一つは九紫火星の対極にある一白水星の不安定化であり、もう一つは一白と表裏一体で動く二黒土星の不安定化である。九紫は一白の過剰を抑え、二黒の生命力を引き出すように働く。

 一白水星が中宮にありそのエネルギーが過剰になると、坎宮の六白金星がエネルギー欠乏状態となる。一白は縮小、圧縮の気であり、ストレスを極限まで抱える傾向がある。坎宮の六白金星暗剣殺はATP不足あるいは酸化ストレス状態を現わし、この状態がうつや自閉症を引き起こす引き金になる。九紫は一白の過剰を抑制し一白のエネルギーが有効に働くよう導く。

 二黒土星のエネルギー欠乏は親の愛情や庇護の欠乏を現わす。二黒の欠乏状態は自尊心の低下、うつ、引きこもりを起こし、学齢期に至ると衝動性、多動性、攻撃性となって現れることもある。九紫は二黒と相性が非常に良く、二黒にエネルギーを満たし、目的意識を持たせ理性的な行動を促す。

 多動性は三碧木星と九紫火星とのアンバランスによるところが大きい。六白金星が中宮にある時、艮宮の九紫と坤宮の三碧はバランスを崩しやすい。三碧のエネルギーが過剰になると九紫の力が抑制され、三碧の特徴である衝動が多動性となって現れる。九紫の力が弱くなると注意力散漫になり判断力が低下する。

 九紫は内に向かう視点を外に向かわせ、自分を縛るものから解放し覚醒を促す。また物事の価値判断を行い、優先順位を決定し、目的意識を明確にする。さらに自分と他人との正しい間隔を築き、合わない縁から離れさせ人間関係を整える。

 

 

〔交感神経の抑止〕

 マグネシウムは交感神経抑制作用がある。交感神経が働くと副腎からアルドステロンが分泌されるが、マグネシウムはアルドステロンを抑制する効果がある。副腎皮質ホルモンは一白水星の気質を持つ。九紫火星は一白水星の対極に立ち、一白の過剰分泌を抑制する。九紫は総じて一白過剰による抑圧やストレスからの解放をもたらす。

 

 

〔パニック症〕

 マグネシウムは神経の興奮を抑え精神の安定に寄与する。マグネシウムが不足するとパニック症を起こしやすくなると言われる。九紫火星の定位である離宮には脳機能と心機能を制御する役割があるため、九紫を代表するマグネシウムの不足は必然的に脳機能と心機能の安定性を揺るがす。突然の動悸やめまいなどの発作は、気学的には三碧木星、六白金星、九紫火星の障害(破)が大きな要因として考えられる。三つの九星には共通して妥協しない気質があり、この気質が暦の特定のタイミングで過剰になると気の断絶や過剰反応が起き、身体においては発作的な症状が現れる。

 九紫火星は理性、客観性、精神性を担い、一白水星は情感の動きを現わす。九紫と一白は客観と主観、理性と感情のバランスを築き、自律神経をコントロールする主要な柱となる。

 

 

〔細胞分裂の制御〕

 マグネシウムイオンはカルシウムイオンとともに細胞分裂をコントロールする。カルシウムとマグネシウムの欠乏は何れの場合も細胞分裂の異常を来す。細胞分裂が盛んな坎宮は一白水星の定位であり、これに対峙するのが離宮を定位とする九紫火星である。気学では離宮をN極、坎宮をS極と見なす。これにより九紫には斥力、一白には引力が現れる。一白と九紫は対極の磁性を現わすため、二つの九星の動向は生体に様々な影響を及ぼす。一白および九紫は代謝が最も活発化する震宮および兌宮においてエネルギーが不安定化する。細胞分裂の異常には九紫または一白の持つ磁性の乱れや減衰が影響しているものと考えられる。磁気は細胞分裂やタンパク質構造の変化、酵素活性化、DNA合成、遺伝子暗号に影響を及ぼし、がん細胞の抑制や退縮に関与するとの指摘がある。

 補足として一白水星暗剣殺は天道のようにその九星のプラスの気質を高めるエネルギーを伴うことがあるが、九紫火星暗剣殺は天道を伴うことがなく、むしろ破がもたらす障害によってマイナス作用を強める。九紫火星暗剣殺の症例としてアレルギー、炎症反応、DNA損傷による癌化などが考えられる。マグネシウム不足はこれらの症状を引き起こしやすくすると考えられる。

 

 

〔にがりと苦土〕

味覚の苦みは九紫火星の気質に該当する。にがりは塩化マグネシウムを主成分とし、舐めると苦味がある。また苦土石灰は消石灰(水酸化カルシウム)とマグネシウムを含む石灰である。一白水星の気質を持つ塩素およびカルシウムは九紫火星の気質を持つマグネシウムと極性のバランスを取りながら相補的に働く。

 

 

〔マグネシウムを含む食品〕

 マグネシウムは豆類、種実類、藻類、穀類、野菜類、魚介類など幅広い食品に含まれる。中でもあおさ、青海苔、天然塩、かぼちゃの種、昆布、ココア、コーヒー、ごま、アーモンド、大豆、緑茶、とうがらし、しそ、枝豆、ほうれん草、ごぼう、バナナなどに多く含まれる。天然塩に多く含まれる背景には、海を意味する七赤金星と九紫火星との結びつきの強さがある。

 

 

 

 

浅沼気学岡山鑑定所監修