傾斜の意味

気学でいう傾斜は人生におけるベクトル、最も大きな方向性のことを言う。この傾斜は本命月命の関係性から生まれる。本命は物質世界の価値を体現し、月命は非物質世界すなわち精神や心の価値を体現する。我々の人生は本命という物質環境を足場とし、この上に非物質世界の月命人生を築き上げている。

 

 傾斜はどちらの命運を軸に持ってくるかによって変化する。傾斜は人生の大きな方向性を決めるが、日常では可変的であり可逆的に用いられる。我々は日々すべての瞬間に本命と月命の波動を使い分けている。この場面には本命の自分、この人と接する時は月命の自分というように。人はすべての瞬間に本命と月命の波動スイッチを切り替えながら過ごしている。

 

 人生は36歳で折り返し地点を迎え、ここから6年をかけて人生のベクトルを逆転させる。そういう意味では36歳は一つの終着点であり出発点でもある。ここから新たな人生が始まり価値観が逆転していく。今まで組織に意識が向いていた人は家族に意識が向くようになり、物質的華やかさに目が向いていた人は精神的落ち着きに目が向くようになり、他人軸で動いていた人は自分軸で動くようになる。

 

 傾斜とは本命世界と月命世界とのバランスで成り立つ。本命という物質世界と月命という非物質世界とのバランスであり、目に見える世界と目に見えない世界とのバランスである。気の世界は傾斜を通してその人の人生を平均化させる。一方的な傾きを逆転させることによって陰陽のバランスを取るのである。36歳から42歳までの6年間は傾斜の逆転に要する物理的時間であり意識的時間でもある。

 

 第2の人生は新たな価値観の構築がテーマとなる。42歳からの12年間は後半人生のための新たな基盤づくりとなる。前半に身に着けていた肩書、地位、名誉を捨て、今まで顧みなかった知識に目をやり、今まで関わらなかった人に意識を向け、もう一つの自分を新たに築き上げる。傾斜は一方的に傾き続けることはない。傾斜があれば逆傾斜がある。前半の傾きは後半の逆転によって平均化され、本命と月命の傾きは日々の生活の中でその都度平均化される。

 

 易の地天泰九三の爻辞にこうある。「无平不陂 无往不復 艱貞无咎 勿恤其孚 于食有福」。平らかな状態もいつかは傾き、往きて復らない人はいない。艱しんでも身を慎めば咎めはない。その誠意が受け入れられなくとも憂慮することはない。食において福があるであろう。前半の人生が憂うるものであったなら後半の人生は浮かび上がり、前半の人生が華やかであったならば後半の人生は陂くものと心に留めておく。陰陽の世界は同じ状態を作らない。傾斜は自分を一方へ傾かせ、これを逆転させることにより逆の立場から自分を見つめなおす機会を与えている。

 

 

 

浅沼気学岡山鑑定所監修