環境変化をもたらす宮と変化リズム

環境変化は暦のリズムによって生まれる。環境変化とは住環境、仕事環境、人間環境などが変化することであり、これらの環境変化が起きる前提には心境変化がある。環境変化をもたらす暦のリズムとは三つの宮に同会することによって起きる。三つの宮とは艮宮、中宮、坤宮である。

 

 艮宮の働きは継承と転換である。艮宮の役割には上手くいっている部分の継承と上手くいっていない部分の軌道修正がある。この働きは艮宮に位置する二つの十二支の働きからもたらされる。二つの十二支とは丑と寅である。

 

 丑は旧来のやり方を基本通り引継ぎ、伝統を守る。寅は旧来のやり方から脱し、新たな分野を切り開くことで発展を図る。艮宮の難しさはこの丑と寅の方向性が食い違う点である。丑は伝統を守る父親の気質を象徴し、寅は家を出て新たな環境へ身を乗り出す長男の気質を象徴する。この二つの十二支の境界を鬼門という。鬼門には互いに逆方向へ進む気の流れがあり、この二つの流れがすれ違うことで断絶が生じる。

 

 艮とは「退」を意味し、「退く」のほかに「止まる」働きがある。丑寅の境界における断絶は逆方向へ進む気のぶつかりによって生じるが、互いの動きを一旦止め、その後ゆっくりと前進することで、後退と前進の繋ぎを得、境界の断絶を回避することができる。

 

 

                 

 

 

中宮の変化は成就と破綻という両極の形で現れる。プラス面では願いが成就し、努力の成果が現われる。あるいはゼロから新たなことを立ち上げる独立の形をとることもある。一方マイナス面では見過ごしてきた問題が表面化し、逃げ場を失い、破綻の形となって現れる。

 

 中宮の変化は中宮に同会した九星がすべての決断権を握る。これはすべての責任を自分が背負うことを意味し、腹をくくった決心決断が起きる。中宮は五黄土星の定位であることから、強い欲求が生じ、その欲求を周囲の人を巻き込みながら現実化しようとする。中宮同会から始めることは未経験のことが前提となるため様々な意味で覚悟が必要となる。上手くいけば大きな成果を得るが、上手くいかなければ大きな失敗となる。

 

 中宮から始めることは覚悟とともに本当の実力が試される。自分が中心となって動き、すべてを差配するため、周囲との連携を誤ると終始運気を揺さぶられる。中宮の変化は順風満帆に推移していたことでも、ある時から急転し破綻することもある。

 

 中宮の運気は両極端の傾向が出るため、中宮同会からものごとを始める時は自分の実力をいかに客観的に把握しておくかが問われる。強欲をもって実力以上のことに手を出すと、周囲の協力を失い破綻の方向へ進む。中宮の運気は両極端ではあるものの、謙虚さを身に着け周囲との協調を図りながらことを進めていくと、両極を走る不安定運気が安定するようになる。

 

 中宮の成就と破綻を科学的に分析すると、どのような働きが隠されているのだろうか。注いだエネルギーは目に見えないが、ミクロ世界からマクロ世界へ至る過程で物質構造を変化させる。注いだエネルギーが中宮において形に現れるという現象は、非物質世界のエネルギーが物質世界へ移行するという構造転換が起きているものと考えられる。

 

 五行の土は陰エネルギーと陽エネルギーの転換を行い、中宮は非物質界と物質界の次元転換を図る。この過程においてエネルギーバランスが整うものは成就の形として物質化し、バランスが整わないものは物質化の失敗として崩壊に至ると考えてもよいだろう。

 

 

                 

 

 

坤宮の変化は物事の終わり、締めくくりをもたらす。長く続いたことが終わるのが坤宮の特徴であり、ここにも二つの十二支によって変化の傾向が分かれる。二つの十二支とは未と申である。未は終了、解体、浄化の働きを持つ。物事を完全に終了させ、腐敗したものを解体分解し、元の綺麗な形に戻す。一方、申は解体分解浄化したものを再生させる。また慣れ親しんだ環境を捨て、新たな環境へ身を乗り出すことで生活環境に変化をもたらす。申の気はしばしば家事を放棄し、新たな趣味に興ずるという傾向も出る。

 

 丑と未は継承と終了という逆のベクトルを持ち、寅と申はそれぞれ現状から脱し、新たな環境に身を乗り出すという共通項が伺える。結末を作る未と新たな展開を模索する申の気により、坤宮は終わりのための終わりにならず、次の展開へ繋ぐ節目の宮となる。完了したものは次の新たな展開へと向かう。よって坤宮で締めくくった流れは、新たなことを始める震宮へと引き継がれる。

 

 坤宮における終了は本命及び月命の九星によって期間に差異が出る。本命は年単位の循環によって形作られる運気であるから、長いものでは数十年あるいは世代を超えて続いたことが終わり、月命は月の循環によって形作られる運気であるから、長くとも2,3年の範囲で続いたことが終わると観る。

 

 

                  

 

 

暦が設ける環境変化は基本的にはこの艮宮、中宮、坤宮への同会によって起きるが、このタイミング通りに変化できない時がある。この場合はその次の宮で変化を遂げる。すなわち艮宮の次は離宮、坤宮の次は震宮となる。

 

 気学ではこの三つの宮を結ぶ線を変化ラインと呼ぶ。変化ラインとは運気の流れの変化点に当たり、地球における断層に当たる。この変化ラインに入ると必然的に環境を変化せざるを得ない状況に至る。この環境変化にも段階があり、まずは心境変化が起き、その次に物質環境の変化へと至る。その心境変化をもたらすのが兌宮である。

 

 

                  

 

 

兌宮の働きは休息、エネルギー補給、人的交流である。兌宮への同会は人の気持ちを緩ませ、あくせくした生活のリズムを落ち着いたモードへ切り替える。兌の気は九星における七赤金星に当たり、飲食とともに住環境の充足をもたらす。兌宮に同会すると飲食を伴う場所や不特定多数の人が集まる場所へ出向くようになり、人との交流が増える。ここで今までに出会ったことのない人と出会い、交流することによって知見が広がり、このことが心境変化を促す。

 

 兌宮で生じる気の緩みは良い方向へ発揮されれば交際の活発化に繋がり、マイナスの方向へ傾けば浪費、怠惰な生活となる。兌宮の根源の役割は心の変容である。兌宮は内的意識に変化をもたらし、艮宮、中宮、坤宮は外的環境に変化をもたらす。まずは心が変容し、その次に生活環境の変化へと至る。

 

 

                  

 

 

兌宮は人体においても非常に重要な役割を果たす。外的環境の変化に応じるために人体は様々な内的反応によって環境変化に適応する。自律神経の転換、体温の調整、PHの調整、細胞浸透圧の調整、血流の調整、ホルモン分泌による代謝、遺伝子発現の調整など様々である。

 

 後天図における震宮および兌宮は外部環境への適応を担い、兌宮は外部環境の変化を内部環境の変容によって調整する。七赤の気は緊張をほぐし、緩みを作り、当たりを和らげ、余裕を作る。様々な環境変化に対し柔軟性を持って応じる。兌宮は適宜の休息と栄養補給により内分泌の調整を行い、細胞、遺伝子等の内部構造を変化させ外部環境への適応を促す。

 

 兌宮は震宮とのバランスで動く。震宮は三碧木星の定位であり、ここでは体を積極的に動かすことにより代謝を図る。これに対し兌宮は休息と栄養補給によって代謝を促す。震宮と兌宮は相関関係にあり、兌宮のエネルギーが燃焼することにより震宮の動が生じる。ここでもバランスが問われる。何れに傾きすぎても代謝に偏りが生じる。適度な運動と適度な栄養補給は震宮と兌宮のバランスを作る。

 

 

                  

 

 

このように環境変化には内的変化と外的変化がある。内的変化は心の変容によって外部の変化に対応する。心が変容すると次の段階として生活環境の変化に至る。

 

 外的変化を担う三つの宮は変化ラインとして必然的な生活環境の変化を作る。その変化は三つの宮によって性質が異なり、九星が遁甲することによりそれぞれの特徴に応じた変化が起きる。

 

 〔艮宮→離宮→坎宮〕→坤宮→震宮→巽宮中宮→乾宮→兌宮へと至る九星の遁甲は3のリズムで成り立つ。すなわち運気は年月日において3のリズムで変化し代謝を図る。我々が地球において適応する環境は、こうした気の正確な変化リズムと気の循環によって形作られている。

 

 

 

浅沼気学岡山鑑定所監修