地道は成すことなくして代わって終わり 有るなり
土はものを言わない。だから少々の無理でも受け入れてしまう。土はありがたい。準備が整っていないことも、無理を強いていることもそのまま受け入れてしまう。土は移動もできる。盛り上がっているところをならすこともできる。土は綺麗も汚いも辛いも言わない。だからできないこともそのまま受け入れてしまう。それを隠してしまいそのまま抱え続けてしまう。そして数年後に掘り起こしてみると、分解できずにそのままの形で残っているものもある。
土は偉い。我々は土がなければ何もできない。家も建てられない。植物も育たない。植物が育たなければ動物も育たない。土がなければ生命の源である水も蓄えられない。こんな当たり前のことも忘れてしまうほど、私たちは土の偉大さを知らない。易では土の働きを坤(こん)という。「地道無成 而代有終也」とは坤の偉大さを称えた言葉である。
地道とは成そうと思わなくともいつのまにか成し遂げていることを言う。地道は成果を求めず、自分の取り分を考えず、育てることのみに力を降り注ぎ、評価や価値の対象から完全に切り離された世界に生きる。だからこそすべては土に帰り、土に戻る。そして土から再び生まれる。坤の偉大さとともに坤の恐るべき力を知ると、少々のことは何でもないことだと分かるようになる。
(浅沼気学岡山鑑定所監修)