鉄 Iron Fe

 鉄は六白金星の気質に当たる。鉄は銀白色の金属であるが、錆びると赤茶色になる。血液の中ではヘモグロビンの鉄と酸素が結び付くと赤黒色になる。六白金星の色は白を基調とするが、先天の六白すなわち光の六白は何物にも染まらない白と規定し、後天世界(現象世界)の六白は赤黒色と考える。尚、色相環において茜色(オレンジ)を七赤金星の色、赤黒色を六白金星の色と考えると、兌宮から乾宮へ色相環に準じた色が現れる。

鉄は強磁性である。磁性はN極とS極に分かれ、九星の定位を現わす後天図では離宮をN極、坎宮をS極とする。このうち引力は一白水星、斥力は九紫火星が担う。一白が中宮に同会すると六白金星は暗剣殺を伴い坎宮に同会する。この形は磁力によって動きを制約された状態、あるいは高圧によって磁力を失った状態と見ることもできる。

鉄はミトコンドリアの呼吸鎖、肝臓における薬物代謝、細胞増殖、DNA合成などに利用され、様々な生体反応にとって必須の元素である。鉄は国家なりという言葉がある。気学では国家を六白金星の象意と考える。鉄は国威の象徴でもある。

 

 

〔強磁性〕

 鉄は強磁性体である。鉄を意味する六白金星が中宮に同会すると一白水星が非常に安定した状態で離宮に同会する。一白と六白は相生であり非常に強く結びつく。一白は六白を引き寄せると同時に六白の鉄に強磁性をもたらす。但し一白によるストレスが限度を超えて強くなると、六白のエネルギーは放出に転じ失われる。鉄は高圧下に置かれると結晶構造が変化し磁性を失う。坎宮の六白金星暗剣殺は一白の高圧によるエネルギー喪失の形であることを示している。

 

 

〔色の変化〕

鉄は銀白色の金属であるが、温度によって赤黒から黄色を経て白色に近づいていく。気学では六白金星の基本色を白と考えるが、六白は実質的には先天世界の六白と後天世界の六白の色に分かれる。現象世界の前に存在する先天の六白は光の色すなわち白色となり、現象世界である後天の六白は赤黒色になる。鉄の温度が上がるにつれ、後天世界の六白から先天世界の六白の色へと移り変わる。

 

 

〔貧血〕

 坎宮の六白金星暗剣殺は一白水星のストレス下に置かれた状態と考えることができる。気学では坎宮を子宮あるいは大腸の位置と見なす。坎宮の六白を鉄の放出と見なすと、月経・出産による出血、潰瘍性大腸炎などによる大腸からの出血と捉えることもできる。いずれの場合も出血が生じるため、鉄分放出による貧血が生じる。これに対し震宮の一白水星暗剣殺は発汗による鉄分放出、ヘプシジンによる鉄代謝、輸血による鉄過剰症状など、一白に付随する六白(鉄)の増減を現わす。

 

 

〔エネルギーとしての鉄〕

 鉄はミトコンドリアの電子伝達系においてエネルギー産生の重要な働きを担うシトクロムCの構成成分である。六白金星には総合的なエネルギーの意味があり、具体的には太陽光エネルギー、熱エネルギー、電気エネルギーも六白の象意と見なすことができる。

 

 

〔細胞増殖〕

 鉄は細胞増殖に必要な元素である。六白金星は細胞を意味する一白水星のエネルギー源となり、細胞増殖を促進する。

 

 

〔細菌の鉄利用〕

 鉄は病原菌の生存と増殖に使われる。細菌は一白水星の気質とし、一白は六白金星(鉄)をエネルギー源として利用する。鉄調整因子であるヘプシジンは鉄の代謝を行うことで病原菌の鉄獲得を抑制する。鉄代謝を司るヘプシジンを一白の働きと捉えると、ヘプシジンは主に肝臓で産生されるホルモンであることから、震宮における一白の働きとして捉えることができる。

 

 

〔鉄の代謝異常〕

 六白金星(鉄)の不足は坎宮の暗剣殺において現れやすい。以下はすべて坎宮における六白のマイナス症状として捉えることができる。

 鉄は錆びやすい。六白の劣化は鉄の劣化(錆び)と見なす。六白の劣化は他にもエネルギーの漏出や電気系統の故障となって現れる。

 病気の多くは酸化ストレスに関与する。二価鉄は反応性が高く活性酸素を作る主たる要因となる。活性酸素はDNAを損傷させ、発がんリスクを高める。従って病気の大半は六白および一白のエネルギー過不足状態から始まると考えることができる。

➂ 細菌は鉄をエネルギー源とする。この場合細菌を一白とし鉄を六白とする。坎宮の六白(暗剣殺)は鉄およびATP不足と見なし、一白の動きを減退させ活力を失わせる。

 

 

〔うつとの関係〕

 六白金星の欠乏が最も現れやすいのは一白水星が中宮にある時であり、この時六白は暗剣殺という不安定なエネルギー状態となる。六白はエネルギー量を現わすから、六白の不足はATP不足と考えることができる。鉄は六白の気を旺盛に持つ元素であるから、鉄不足はエネルギー不足となり、うつ状態を招く要因となる。

 

 

〔鉄代謝と糖代謝〕

 鉄代謝と糖代謝は相互に影響を及ぼす。インスリンは細胞への糖の取り込みを促進するのみならず、鉄の取り込みも促進する。一方で過剰な鉄は酸化ストレスによりインスリンの働きを阻害しインスリン抵抗性を引き起こす。インスリンは一白水星の気質を持ち、鉄は六白金星の気質を持つ。一白と六白は気学において互いの動きを制御する関係にあり、一白の力が過剰になると六白のエネルギーが抑圧され、結果的に一白および六白双方の働きを不安定化させ弱体化させる。また十二支において未を鉄代謝、申をインスリン等のホルモン分泌の働きと見なすと、何れかの力が過剰になれば未と申の境界線のバランスが崩れ、鉄代謝および糖代謝に支障をきたす。気学において丑寅と未申の境界は陰陽の転換が行われる場所であるため気のバランスを崩しやすい。この経緯から未と申を十二支に持つ人は鉄代謝、糖代謝が先天的に弱いという特徴が現れる。

 

 

〔鉄を含む食品〕

 鉄を多く含む食品としては、肉類、魚介類、藻類、野菜類、種実類、豆類、香辛料などがある。中でも青海苔に多く、緑茶、胡椒、とうがらし(粉)、ココア、ごま、レバー、かつお節、大豆、卵黄にも多く含まれる。尚、タンニンを含む緑茶は鉄の吸収を妨げるために、これらの食品とともに摂取すると吸収を阻害される。鉄が肝臓に多い背景には震宮の一白水星と六白金星(鉄)との相生、また震宮と六白金星との相性の良さが考えられる。

 

 

 

 

浅沼気学岡山鑑定所監修