ヨウ素 Iodine I
ヨウ素は九紫火星の気質に当たる。日本におけるヨウ素の産出量は世界の三分の一を占める。それだけに日本にとってヨウ素は貴重な元素である。ヨウ素が熱されたとき発する蒸気はスミレ色である。またヨウ素はデンプンに反応すると青紫色になる。紫色は九紫火星の色である。ヨウ素は海藻によく含まれるが、海は七赤金星の象意であり、七赤は九紫と密接な関係を持つ。七赤と九紫は互いの力関係によってプラスにもマイナスにも働く。九紫は震宮においてその能力を活性化させ、兌宮においてその能力を弱体化させる。震宮の九紫を自然界に適応した九紫と見なすと、兌宮の九紫は人工的に変容し本来の気質を歪められた九紫と解釈することができる。自然界に存在するヨウ素と生成物としてのヨウ素は性質が異なると言われる。気学の観点から自然界に存在するヨウ素は九紫の良き性質を保持するものと考える。
九紫火星は礼節・道義を現わす。このことは九紫の気質を持つヨウ素に礼節・道義に働きかける性質があることを伺わせる。言葉は礼節の始まりであるから、七赤を現わす言葉遣いが荒くなると九紫のエネルギーが減退し、その結果九紫火星暗剣殺となり兌宮の喉を傷めるものと気学からは指摘できる。また言葉遣い(七赤)が荒くなり礼節(九紫)を蔑ろにすると、ヨウ素(九紫)を含む甲状腺を痛め、甲状腺ホルモンの分泌を乱すことが予測できる。
〔消毒・殺菌性・抗ウイルス性〕
ヨウ素は消毒液としても用いられる。殺菌力は三碧木星、六白金星、九紫火星が持つ気質であり、抗ウイルスについては六白と九紫が基本的な役目を果たす。ウイルスが持つ複製力は四緑木星の働きであり、四緑と九紫は時に牽制し時に協調する関係となる。九紫が中宮にあるとき四緑は九紫の定位である離宮に同会し暗剣殺を伴う。但しこのときの四緑は天道を含む吉神を伴うことがあるため、プラスマイナス双方の働きが現れる。ウイルスは病原体としては人体にとって敵となるが、人体において有用性を発揮する面もある。九紫とのバランスが良く取れている時の四緑は九紫を補佐し物事を整える働きをするが、四緑の気が過剰になると九紫の知見を歪め誤った方向に九紫を導く。
兌宮の九紫火星暗剣殺は九紫が持つ本来の能力を歪める。九紫火星暗剣殺がもたらす弊害として掲げられるものに、炎症・アレルギー反応・発熱・DNA損傷・化学薬品や農薬による毒性・食品添加物による弊害などがあり、これに免疫力の低下が加わる。ヨウ素による口と喉の消毒は殺菌力と抗ウイルス力を発揮する一方、口腔内の善玉菌を殺菌するというデメリットがある。暗剣殺にはこのように一筋罠ではいかない状態が現われる。
〔防腐・防カビ〕
ヨウ素には防腐・防カビの作用がある。発酵および腐れは七赤金星および兌宮の特徴である変質・劣化からもたらされる。九紫火星には七赤がもたらす変質や劣化を防止する働きがある。但しこれは九紫の力が安定的に発揮される時であり、七赤の力が九紫以上に旺盛になると、九紫は七赤の変質を抑制する力を十分に発揮できなくなり、防腐や劣化をもたらす。
〔造影剤・X線検出器〕
ヨウ素は造影剤やX線検出器の素材に利用される。九紫は実態を明らかにする働きや検出の働きがある。
〔甲状腺ホルモンの働き〕
甲状腺ホルモンにはヨウ素が含まれる。甲状腺ホルモンのように代謝に影響を及ぼすホルモンの働きは震宮の一白水星が多くを担うものと考えるが、一白と対極の気質を持つ九紫火星の元素が甲状腺ホルモンに含まれると、その働きは拮抗により複雑化する。代謝が最も活発化するのは震宮であるが、対冲の兌宮にもその影響は及ぶ。一白は震宮にて暗剣殺を伴い不安定化するが、天道等の吉神を得てプラスの働きをもたらすことができる。一方九紫が兌宮に同会する時は暗剣殺に加え破という障害を伴うことがあり、さらには天道を得ることがないため、九紫本来の気質の多くが歪められ、甲状腺ホルモンの正常な働きを妨げる。甲状腺機能が亢進と低下の両極に振られる元には、こうした気学的な背景があると考えられる。
甲状腺ホルモンの分泌に異常が生じると生殖機能への障害も現れる。これは一白水星が生殖機能の働きに直接関与するからである。特に震宮の一白は暗剣殺が生じるため、分泌の過不足が生じやすい。さらに一白が震宮に同会する時は九紫が坤宮に同会し本来の能力を発揮しづらくなる。九紫は一白と拮抗し一白の過剰を抑制する働きがある。このため九紫の力が弱くなる時は一白の力が過剰になりやすく、このことが生殖機能に障害を及ぼす一因になっているものと考えられる。またホルモン分泌機能を担う七赤金星が中宮に同会すると兌宮に九紫火星暗剣殺が発生し、さらに障害を直接的に及ぼす破が加わる場合もある。兌宮の九紫火星暗剣殺は震宮の五黄土星とともに甲状腺ホルモン分泌を不安定化させるものと考える。
〔知能発達〕
ヨウ素不足は知能障害や成長障害を引き起こす。九紫火星は脳機能全般の働きを司り、特に知能の発達に関わる。
〔自閉症〕
ヨウ素欠乏は自閉症スペクトラム障害の発症に関連があるとの指摘がある。自閉症は要因となる九星によって捉え方が変わる。気学では主として一白水星・二黒土星・九紫火星のエネルギー欠乏が自閉症をもたらすものと考える。
一白水星のエネルギーが欠乏すると自己肯定感がなくなり、自信を無くし、不安感を引き起こし、コミュニケーション力をなくす。一白水星と二黒土星は表裏一体の動きをするため、どちらのエネルギーが不足しても双方の弱点が現れる。
二黒土星のエネルギー欠乏は無気力・疎外感をもたらし、母性の欠落による養育放棄を引き起こす要因となる。特に本命または月命に二黒の障害を持つ人は少年期から思春期にかけて登校拒否や引きこもりになる傾向がある。二黒の気の安定性は親からの十分な庇護によって得られるが、二黒は過剰になっても欠乏と同様の症状を引き起こすことがある。
九紫火星のエネルギー欠乏は知性および精神性の発達に支障をきたす。九紫に障害が現れると目的意識が欠如し、何事にもやる気がなくなり、注意力散漫や多動性の傾向が現れる。従って自閉症の傾向が現れる時は、本命および月命の命運をもとにいずれの九星の障害が強いかを特定する必要がある。これらの気質は先天的ではあるが、暦通りに現れ暦通りに消失していくことが多いため、自閉症の克服には医学と気学双方の見地から見極めが必要と考える。
九紫火星は一白水星の不安感と二黒土星の疎外感を解消する働きがある。九紫は知性・理性・精神性の発達を促すエネルギーであり、目標や目的意識を明確に持つことに寄与する。九紫は一白の収縮エネルギーを抑制し、拡張エネルギーに切り替え、精神的ストレスを解消する。九紫は物事の実態を正しく捉え、人間関係においては近くもなく遠くもなく適正な関係性を築かせる。九紫は学習体験によってそのエネルギーを活性化させるため、自分の興味を持つことにエネルギーを注ぎ、知識や知見を高めることで、うつや自閉症を改善に向かわせることができる。
〔ヨウ素を含む食品〕
ヨウ素を多く含む食品には藻類、魚介類、乳製品などがあり、中でも昆布に含まれる量が圧倒的に多い。その他の藻類ではひじき、わかめ、青海苔、あおさに多く含まれ、魚介類ではまだら、さば、ししゃも、あわび、さくらえび、牡蠣、乳製品では牛乳、ヨーグルト、チーズなどに含まれる。藻類は海産物であり、海は七赤金星の象意となる。七赤金星は食を意味する兌宮に九紫火星暗剣殺を抱える。九紫火星暗剣殺はヨウ素の摂取量が過剰になった場合の生体への害を示している。
浅沼気学岡山鑑定所監修

