百七話

 

〔12月の運気〕

 

 

 12月は四緑木星が暦の中央に入ります。四緑木星の基本的性質は従順性ですが、中宮はそのエネルギーが上下に揺さぶられるため、そのエネルギーが順逆ともに顕著に現れてきます。すなわち従う気運と猛反発する機運が衝突する流れが出てきます。12月の暦の特徴は転換の働きを持つ八白土星が離宮という頂点に立ち、そのエネルギーが破という障害を伴い不安定化することです。四緑木星の象意は風であり、風は自由に動き回ることで空気の淀みをなくします。その四緑木星が破を伴った八白土星の壁に行く手を阻まれ閉塞感が生まれてきます。八白土星の象意の一つは橋です。橋は足場が堅固に固められていて初めて安定しその役目を果たします。その八白が規範や価値観を意味する離宮に入り、地に足をつけず浮いた状態になります。つまり離宮の八白土星破とは既存の規範や価値観が足場を失い崩れ落ちる形です。12月の世界は何かに見切りをつけなければ何かを得られないという苦渋の決断を迫られます。一つの地位に拘る者はその地位を失い転落することでしょう。

 その一方で11月から一気呵成に動き始めた三碧木星は12月も引き続きエネルギーを加速させ、その影響力を海外まで及ぼします。この三碧木星の躍進は来年の1月に決着を迎えます。三碧木星の強いエネルギーは隠れた情報を開示させ、閉塞感を打破します。この勢いは既存の人事を刷新させ、組織および国家に驚きの展開とスピードをもって新風を吹き込むことでしょう。2024年の年末に当たり、時代は早くも2025年の新体制、新時代へと足早に進んでいます。

 

 

 

 

 

〔二極化と覚醒の時代〕

 

 気学から捉えると、人間には成長の各段階があり、それと同じように時代にも成長の段階があります。さらに地球という生命体にも成長の段階があります。気学では進化の段階を八つの宮に分けて捉えます。この段階は光の波動における八つの分界、すなわち八宮に現れます。

 

 

 

坎宮: 誕生 

艮宮: 継承 自立 

震宮: 自由 挑戦 

巽宮: 従属 習得  

離宮: 覚醒 従属からの離脱 精神的自立 

坤宮: 終焉 浄化 再生 

兌宮: 実り 休息 共有 

乾宮: 責任 守り

 

 

 

 今私たちが生きる時代は巽宮の組織や国家への従属から精神的に自立する離宮の時代へと移行していると私は考えています。今はちょうどその境目にあり、実質的には離宮時代へ足を踏み入れたスタートラインの段階と位置づけできます。

 

 離宮の働きは客観、真理探究、覚醒です。この宮に入ると自分を客観的に見ることができるようになり、客観的に見ることができるからこそあらゆる出来事の真相が見えるようになり、世の中の真相が見えるからこそ他人の価値観から自分の価値観で生きるようになり、自分の価値観に従って生きるからこそ精神的に自立を果たした自分に生まれ変わるのです。

 

 離宮の働きの基本は分離です。これは価値観の異なるものが分かれていく形です。これに対し対極に位置する坎宮には統合の働きがあります。離宮と坎宮、九星の一白水星と九紫火星は全く異なる働きをしながら、表裏一体の関係となり、自立のための中心軸を形成します。二つの極は一つの軸の中で一体となって動いています。分離は統合とともにあり、統合するには執着からの分離があり、執着からの分離がなされると心は統合へと向かっていきます。

 

 今、時代は旧体制から新体制へ、旧い価値観から新しい価値観へと離脱しつつあります。この移行の中で巽宮という依存の宮に留まろうとすると、日増しに生きづらさが出てくるでしょう。それは時代の流れに逆行しているからです。巽宮の価値観を主体に生きる時代はもう既に姿を消しつつあります。巽宮の価値観とは何かの組織に従属し、組織の価値観で生活の柱を立て、組織の価値観に自分を合わせて生きようとすることです。それは自分の価値観を封印し続けることを意味します。

 

 暦から見ると、離宮時代の本格的な始まりは2025年から始まる可能性が高いです。離宮時代は自分の価値観がなければ軸を失ったコマのようになってしまいます。離宮時代を生きるには既存の価値観からの離脱が必要です。そして離脱は常に生誕と一体で動きます。生まれるということは母体からの離脱を意味し、生まれると自分ではないものとの統合の過程に入ります。離宮時代の覚醒とは生まれた時の自分に戻ることであり、それは既に命運の中に納まっている唯一無二の自分の目標と目的に戻ることでもあります。

 

 今、私たちの目の前の世界が古い気運と新しい気運に分離していくように見えるならば、それは既に自分が新しい価値観を打ち立てようとしている証拠です。この段階に達すると今まで囚われていたものから離脱するため、従うことのストレスから解放され、日々の生活が次第に楽になっていくはずです。一方、比較的安定し軌道に乗っていた生活が次第に煩雑化し、ストレスと閉塞感が益々増えていくように見えるならば、それは自分が未だ旧世界の価値観に足を踏み入れたまま留まっていると言えるでしょう。

 

 気の世界の成長段階は光の波動の構成から生まれています。光はエネルギーであり、私たちは地球に生まれると同時に波動の通行許可証を受け取ります。それが本命(年)、月命(月)日命(日)です。この三つの時空から生まれた命運を受け取り、これを基盤として地球の波動環境に適応し、個々人が独自の道のりを歩んでいきます。この命運に成長の段階が刻まれており、私たちは意識することなく成長の階層を登っていきます。離宮は成長の頂点に位置し、同時に生まれの坎宮と対極の位置に当たります。離宮に入るということは与えられた仮の世界ではなく、命運に刻まれている自分独自の価値観に入ることを意味します。変わるとは自分自身が次の成長の段階に移ることであり、意識の階段をだまって上り移ることです。

 

 

 

 

 

〔離宮に存在する真の目標〕

 

 

 行動のもとにはそれを求めるための原動力があります。その原動力は目標と言い換えてもよいでしょう。原動力を意味する三碧木星という気は九紫火星のエネルギーを得てはじめて真直ぐに進むことができます。この時の九紫火星とは目標と規範です。

 

 真の目標は離宮に現れます。真の目標は気学的には最も高い位置にあり、それは何物にも属さず、唯一無二の自分がダイレクトに繋がることのできる空間です。ですから真の目標は巽宮には存在しません。巽宮の目標は従属する相手との関係性の中で通用する約束事であり、それは期間と条件の定められた有限の関係性です。そこには利害があります。真の目標に利害はありません。なぜならその目標に繋がるルートには天の意思と自分との直接的繋がりしかないからです。

 

 本当の目標は離宮にあり、天の気に直接繋がる時にのみ現れてきます。それが離宮の意味です。ですから何かに従い、何かに依存している自分から真の目標は出てきません。そのことをもう一度確認する必要があるように思います。離宮は自分が生まれてきた本当の意味に気付かせる宮です。離宮は生まれを意味する坎宮と対峙する宮であり、坎宮は創造を司り、離宮はこの具現化を司ります。離宮の目標は坎宮の中から生まれてくる思いと一体化しています。離宮と坎宮は自分軸を形成し、自分軸を形成すると自分だけの価値観が生まれてきます。この気付きによって自分が本当にやりたいこと、自分独自の才能の活かし方が分かってくるのです。

 

 

 

 

 

〔巽宮の目標から離宮の目標へ〕

 

 

 成長の段階を八宮から捉えると、離宮は頂上であることは確かです。一方、光の構成から八つの宮を捉えると、一つ一つの宮はそれぞれ特有の役目を持ち、優劣をつけるものではないことが分かります。坎宮は創造を司り、計画を立て、物語を作ることによって、目指すべきルートを凡そ決めます。艮宮は人と人を繋ぎ、世代間の断絶や技術の格差を防ぎます。震宮は実践の場であり、試してみさせ、失敗してもすぐに浮上できるよう様々な経験のチャンスを与えます。そして巽宮は震宮で学んだことを活かすために人々の力を組織化し、個人ではできない規模の仕事を成し遂げられる環境を作ります。そして離宮はこの計画を現実に明らかにするために規範を定め、これを浸透させ、正誤の判断を行い、目標に確実にたどり着けるように導きます。

 組織には小さいものから大きなものまで様々な形態があります。地域の集まり、趣味を同じくする集まり、考えを同じくする人の集まり、共通する利益を追求する集団など、いわゆる法人といわれる形は巽宮より生じてきます。そして政府、官僚、国家も巽宮より作られる組織になります。これらの組織には個人では到底できない作業量をこなす力があります。これが巽宮の強みです。

 巽宮はこの中で従う側に立ち、その対冲に位置する乾宮は従わせる側に立ちます。組織や国家という仕組みは従う巽宮と従わせる乾宮との共同作業によって成り立つものです。一見、乾宮は巽宮より力が上であるかのように見えますが、後天図が示すことはあくまでもバランスです。巽宮は乾宮に従属しているように見えながら乾宮より上の宮に属し、乾宮の力を利用する立場でもあることを後天図は示しています。

 気の世界はすべてバランスによって成り立ち、一つの宮が突出してエネルギーを発揮することはありません。但しそこには各々の宮の役目があり、その役目を逸脱することはできないのです。なぜなら八宮は光を起源とするからです。宮は八つに分かれていても元は同じ一つの光だからです。 

 巽宮には巽宮の強みがあります。そして巽宮には巽宮の目標が掲げられます。国家が予算を組むことも、企業が収支を企てるのも巽宮の目標に則っているからです。けれども巽宮で与えられ信じる目標は人生の目標にはなりません。人生の目標は自分の命運に刻まれた奥底にあり、一つの思いが自分の物語となり、それが離宮において明確な目標となって具現化していくものなのです。

 

 

 

 

 

 

浅沼気学岡山鑑定所監修