八卦の象意

 

乾の象意は光、天。陽爻が三つ重なる形は完全性、無限性を表す。この気質を象徴するものが光。光は先方が制限しない限りすべての場所に平等に行き着く。乾の完全性は形で表すと円、球体となる。この意味は平等であること。乾は与える一方で自分の持ち分を増やすことはない。この気質に適うものが現実にあるだろうか。乾は気学の六白金星。六白を本命または月命に持つと公のために尽くすようになる。この見返りを求めない気に品格が出る。品格とは光である。

 

 

兌の象意は沢、海。水が溜まる形である。兌の形の上爻が陰になっているのは口が空いている形と見る。故に口、しゃべる、会話の意味が加わる。上部が陰となって欠けるため、乾の完全性が崩れ、気質に柔らかさ、面白さ、喜びの感情が出てくる。気学では七赤金星となるが、七赤は常に余裕を求める。コップを一杯にするのではなく七分目に留める。100点満点を取るのではなく70点で良しとする。この形の意味は喜び、安楽、余裕である。完全性の危うさを兌の気は補っている。

 

 

八卦の中で坎とともに陰陽のバランスが取れた数少ない形となる。この形は均整のとれた形であるから美の意味が生じる。離の象意は火。火はものについて燃焼する。燃焼すれば形がなくなり決着する。火は暗闇を照らすことから物事を明るみに出す。上下の陽爻は外界から断絶するかたちであり、物を切る形でもある。物事に妥協せずはっきりと意思表示する気質が出てくる。ここから離れる、採決、判定、鑑定、検査の意味が出てくる。この形は真理を見抜く目の形でもある。離は気学の九紫火星。九紫は物事に妥協せず、真実を見抜く目を持つ。九紫の背景には先天の乾があり、窮する人を救うという使命を持つ。

 

 

震の象意は雷。光の化身でもある。雷は地面と空の雲との間で起こる放電現象である。震の形は上に向かって瞬間的に上昇する正電荷と見なすことができる。震の陽爻は上位の陰爻を圧倒するほどのエネルギーがある。何かがいきなりスピードをもって動き始める形が震である。弓が飛んでいく形にも見える。雷は音と振動を伴う。震の形は陽爻が周波数(電波)を発する形と見ることもできる。震は驚きをもって人を圧倒し、怖れをもって人を屈服させる。震は瞬間的な動きであるため坤のような持続力がない。震はすべからく速い。この気質が人の危急存亡を救う。

 

 

巽の象意は風。巽という文字は神殿の前の舞台で踊る形。風のように浮遊する性質のものを表す。風は進退定まらず居場所も定まらない。初爻の陰は地に足がついていない状態。巽は従う気質であるが過剰となると過信する。巽の利点は物事を整理整頓し、住み心地のよい環境を整えるところ。巽を上目遣いの形とみると反発の意味となる。巽は乾の主人と主従関係を結ぶが、見返りが少ないと気持ちが離れる。縁をもたらすのは巽の気である。気学では四緑木星。四緑の状態が良い人はとかく良縁に恵まれる。

 

  

離同様、陰陽のバランスが取れた形となる。バランスは安定感の証であり、坎は八卦の中で北(最下)に位置するがゆえに最も安定する。坎の象意は水。水はH2O。水分子の形は坎の形そのものである。また坎は穴の形でもあり、糸を結ぶ形でもある。坎には書く意味があるが、鉛筆の形を見て坎の形と発想できる人がどれだけいるだろうか。鉛筆の芯を正面から見れば坎の形になっていることが分かる。泉に石を落とすと水紋ができる。この形も坎である。中心から四方に広がる波紋の形は中心点から電波が広がる形にも見える。ここから坎には伝達、指示、統括の意味が出てくる。

 

 

艮の象意は山または手。物が積み重なった形。盛り上がった部分。建物の階層。橋。壁。囲い。行き止まりの形。震を前進する形とすれば、これを上下逆転させた艮は後ろに下がる形、あるいは後ろに引っ張る形。故に艮の文字は「退」となる。この形は流れを切り替える形であり、方向転換、環境変化が起きる。上位の陽爻は震と同じく非常に強いエネルギーを持つ。艮は引継ぎの役割を果たすが、自分の仕事を容易に手渡さない。よき伝統を守り切るという責務が一本の立ちふさがる陽爻の姿に現れている。

 

 

坤の象意は土。土の役割を果たすものはすべて坤の象意となる。八卦の中で坤ほど気質の捉えにくい卦はない。乾の陰陽逆転が坤。乾を光とすると坤は闇。何もない状態「無」である。坤の働きは「易経を読む」でも度々記述している。すべてが陰爻の形は細かいものが無数に集まっている形。これが土の状態。また中身が空っぽの形でもある。坤は気学の二黒土星。二黒に過不足のエネルギーが生じると貧困、欠乏の意味が生じる。さらに坤は物がばらばらに解体される形でもある。物理の世界で未だ正体が確認ができていない重力、グラビトンの存在もこの坤の象意に含まれよう。坤は最も地味で目立たないが、大地となり、母性となり、生命を生み出し育む。乾の光と同じく無限大のエネルギーを持つ。坤の力に適うものはない。

 

 

 

 

浅沼気学岡山鑑定所監修