炭素 Carbon C

炭素は七赤金星の気質を持つ。地球上に存在する物質は7千万種類あり、そのうちの90%は炭素を含む有機化合物である。人が毎日摂取する食べ物を構成するタンパク質、糖、核酸、アミノ酸、脂肪は炭素化合物であり、人体の18%は炭素で出来上がっている。炭素は地球においても人体においても特別な地位を占める元素であるが、これを九星に置き換えるとさらにその重要性を理解することができる。七赤は衣食住を満たすエネルギーであり、定位である兌宮は日常生活、身近な生活環境を意味する。炭素は兌宮の意味に準じた元素であり、様々な有機化合物は生体維持に欠かせないものとなっている。

七赤金星の易学的な特徴はその欠けた形にある。六白金星の元となる乾上爻に欠けが生じたものが七赤の元となる八卦兌の形である。兌の象意は沢であり、口の形でもある。ここから不足する、集まる、溜まる、喜ぶ、話す、食べる、変容する、という意味へ派生していく。不足は程よさへの調整となり、集まる形は化合物生成の働きとなり、溜まる形は地下の原油や地上の沢・海となり、口は物を食べ話す働きとなり、変容は物質の劣化、腐食、発酵の働きとなる。七赤は衣食住を安定させ、幸福感をもたらす気と考える。

元素の気質を調べていくと、最終的に七赤金星の気質を最も純度高く持つ元素は炭素のみであることが分かる。この意味でも七赤の気質を旺盛に持つ炭素は生命体の生活環境において非常に重要な役目を持っていることが分かる。七赤は生命体が最も日常的に使用する気であり、三碧木星とともに代謝の主要な働きを担う。三碧を代表する元素は水素であり、七赤を代表する元素は炭素である。化合物の基本構造にH(三碧)とC(七赤)があることは気学から見ても至極当然のこととして理解できる。

炭素の化学的性質を調べていくと、一白水星の気質が常に隠れているように見える。これは七赤金星が定位とする兌宮の先天の九星が一白水星だからである。従って七赤の持つ働きの裏には必ず同時に一白の働きが含まれることになる。例えば炭は穴が多いため吸収効率が高い。この穴は一白の形である。七赤の基本は茜色であるが、炭の色は黒である。黒は一白の色でもある。このように炭素は七赤と同時に一白の気質が必然的に現れる元素となる。

 

 

〔ダイヤモンドと黒鉛〕

炭素から成り立つ単体(同素体)としてダイヤモンドと黒鉛がある。ダイヤモンドは炭素原子が正四面体上に重なった巨大分子で、すべての物質の中で最も硬く熱伝導率は最も大きい。一方ダイヤモンドは自由電子がないことから電気伝導性がない。堅固で光彩を放ち希少価値の高いものは同じ五行金の六白金星に属するが、ダイヤモンドは元素ベースで捉えると七赤金星に属するものとなる。五行の金は下降するエネルギーであり、上昇する木のエネルギーと相剋の関係となる。木は柔らかいものであり、金は硬く固まる性質を持つ。

黒鉛は六角形の網目状に並んだ炭素原子の平面膜が弱く重なりあった巨大分子で、電気伝導性を持ち、鉛筆の芯に利用される。黒鉛は平面膜の結合が弱く摩擦によって剥がれやすい。鉛筆はこの性質を利用して文字を書く。剥がれは七赤の欠けの性質であり、文字および文章は一白の象意である。黒鉛は元素の視点から捉えると七赤の物質となるが、用途においては一白の性質が現れる。先天図の兌宮は坎(一白水星)の定位となる。七赤金星が裏に一白水星の気質を持つことは、元素の解釈においても欠かせない視点となる。

 

 

〔炭素エネルギー〕

化石燃料には炭素が含まれる。石炭、石油等の化石燃料は七赤金星の性質に当たる。気学から捉えると、エネルギーは総合的に六白金星の働きに該当する。六白は与えても尽きない気質を持つことから、太陽エネルギーはこの典型となる。同じ五行の金を持つ七赤は欠けの象意があることから、資源としては有限のエネルギー体を現わす。また兌の形から地下から地上に湧き出てくるものという象意がある。その意味でも石油は七赤型エネルギーの典型として見ることができる。七赤金星は三碧木星のエネルギー源となり、三碧は七赤からエネルギーを得て動く。三碧を乗り物と見なすと七赤はガソリンとなる。三碧と七赤は動力を生み出す基本形である。七赤型のエネルギーは身近にあり加工しやすく安価であることが気学的な特徴となる。

無尽蔵型のエネルギーである六白金星は兌宮に入ると不安定化する。太陽光エネルギーは六白型エネルギーの典型であるが、天候に左右されるという欠点がある。六白が兌宮に入る時は四緑木星が中宮にあり、四緑の気が旺盛になると低気圧に傾くため日照量が減る。この時動力を表す震宮には無・枯渇・節約の意味を持つ二黒土星が入る。一方化石燃料を意味する七赤は兌宮において障害をもたらす気が現れず常に安定した状態を保つ。このことから化石燃料が生活レベルにおいて利便性の高い安定したエネルギー形態であることが分かる。

補足として離宮および震宮に同会する六白金星も常に安定した状態にある。離宮の六白に該当するエネルギーとしては、中宮の二黒土星(地)と震宮の九紫火星(火)の象意から地熱、また兌宮の四緑(地上のガス)と坎宮の七赤(地下の化石燃料)の象意からは天然ガスが考えられる。また震宮の六白金星に該当するエネルギーとしては、兌宮の一白水星(水)と中宮の八白土星(ダム)の象意から水力発電を掲げることができる。水力発電はすべての発電方式の中でエネルギー変換効率が最も高く、天然ガス(LNG複合発電)は二番目に高い。

 

 

〔活性炭〕

炭素は七赤金星に属する元素であるが、その七赤の気質の基盤を提供しているのは先天の一白水星である。活性炭は七赤と一白の混合体と見なすことができる。活性炭の無数の小さい穴は一白を現わし、脱臭はものを集め吸収する七赤の働きとなる。

 

 

〔重粒子線治療〕

 炭素イオンは重粒子線治療に利用される。炭素イオンを用いる理由として、がん細胞へ集中してビームを当てることができ、がん細胞以外の周囲の細胞へのダメージが少ないことが掲げられる。七赤金星はビームを意味する三碧木星と相補的に働き、三碧が中宮にある時七赤は離宮に同会し、目的を明確化し一つに絞る気質が現れる。離宮の七赤には特に現状に応じて物事を最適化させる機転の働きがある。また外科治療を意味する九紫火星が中宮にある時、七赤は震宮に同会し、持ち前の融通性と応用力を発揮する。震宮は対象に対して正確に直進する性質があり、七赤はこれを程よき状態に留め、当たりを柔らかくする。

 

 

〔反磁性体としての炭素〕

 炭素は反磁性体である。反磁性とは磁場をかけた時、物質が磁場の向きと逆方向に磁化され反発する性質である。この性質は震宮および兌宮に特徴的に現れる。後天図は地球の磁場環境を現わしており、離宮はN極、坎宮はS極となる。磁力線はN極からS極に延びる。

 坎宮の一白水星は強い磁力を持つが、一白が坎宮と90°角の震宮に同会するとその磁力に反発して打ち消すように動こうとする。震宮の一白水星暗剣殺は三碧木星が中宮にある時の反磁性を現わした形でもある。これと同じ原理が働き、兌宮も磁力線に反発して磁場が緩められる。七赤金星は兌宮を定位とするから、炭素は兌宮の物理的特質に従い反磁性を現わすことになる。

 

 

〔熱伝導性〕

 一般的に兌宮に属する物質は熱に弱く腐敗し劣化しやすいという傾向が出る。このことは兌宮に同会する九星の状態を見ればよく分かる。例えば火気を現わす九紫火星が兌宮に同会すると、暗剣殺あるいは破を伴い、兌宮が火気に弱いことが示される。また同じくエネルギーを現わす六白金星が兌宮に同会すると、欠けの作用が働き金気に欠損が現れる。

 五行の金には兌宮と乾宮の金がある。後天図の理論から判断すると、兌宮は軟化・液化し、乾宮は硬直化・固体化する。さらに乾宮の中でも兌宮に近い乾宮と坎宮に近い乾宮がある。乾宮(金)から坎宮(水)に近づくと、“極まれば変ず”の法則から硬直化が極まって軟化し、固体から液体へ移行する。従って乾宮の硬さが最も極まるところは乾宮と坎宮の境界と決まる。この境界にある物質がダイヤモンドとなる。

 ダイヤモンドは炭素の同位体であるが、炭素が持つ七赤金星の気質から離れた性質を持つ。ダイヤモンドを硬度の点から位置づけすると、坎宮に一番近い乾宮の物質となる。ダイヤモンドは熱伝導性が高いが、自由電子がないため電気伝導性がない。熱伝導性と電気伝導性は比例するという法則があるが、ダイヤモンドは自由電子がない替わりに格子振動による伝播力が高いため熱伝導性が現れる。同じ炭素の同位体である黒鉛は自由電子があり、電気伝導性および熱伝導性も現れる。黒鉛は硬度の面から捉えると兌宮に属する物質と定められる。

 

 

〔電気伝導性〕

 後天図の理論から捉えると、震宮および兌宮は自由電子が多く、乾宮から坎宮に移行するにつれ、自由電子の動きがより少なくなっていくと推測できる。ところが実際の元素は後天図の理論とは異なる性質を現わす。例えば七赤金星の気質を持つ炭素は六白金星の鉄より電気伝導性が低く、七赤の元素であるが兌宮の自由電子の多さを反映していない。実際兌宮に属する物質には油やプラスチック・ビニールなどの石油合成品があり、これらはほぼ電気を通さない。このことは元素が持つ性質に単体の九星のみでは図れない様々な要素や状態が含まれることを示唆している。

 一方、震宮と兌宮に同会する九星の配置を見ると、電気伝導性の有無とその強弱を明確に読み取ることができる。例えば六白金星が震宮に同会し、一白水星が兌宮に同会する時は電気伝導性が高くなり、七赤金星が震宮に同会し、二黒土星が兌宮に同会する時は電気伝導性が低いか消失すると考えられる。六白と一白は双方ともに電気をよく通すが、七赤と二黒は二黒の土性(土は電気を通さない)が加わるため電気を通さなくなる。このため八白土星が中宮に同会する時は震宮と兌宮の電気伝導性が高くなり、九紫火星が中宮に同会する時は震宮と兌宮の電気伝導性が低くなるか消失することが予見できる。事実八白中宮の形は水力発電を現わす形でもあり、水力発電はエネルギー変換効率が最も優れた発電方式でもある。また九紫火星は離宮を定位とし、人においては離縁、物性においては絶縁を現わす形でもある。但し九紫火星に分類される元素のマグネシウムは電気を比較的よく通す。従って元素の電気伝導性は単体の九星では図れず、九星の組み合わせと配置によって生まれるものと推測できる。

 兌宮は体を休め不足を補い英気を養う宮である。これに対し震宮は自由に体を動かすことのできる宮である。後天図において自由電子が最も活発化すると考えられるのは震宮と兌宮であるが、兌宮はエネルギーを補い休息する宮であるから身体は動かなくなる。後天図における震宮は体の自由を現わし、兌宮は心の自由を現わす。兌宮は体が動かないが心が動く。この点を物性に置き換えると、兌宮は身体活動(熱と電気の伝導性)が低下し自由度(自由電子)を活かせない状態となるが、精神活動においては余裕ができ自由度(自由電子)が増すと捉えることができる。

 

 

 

 

浅沼気学岡山鑑定所監修